112F59

28歳の初妊婦。妊娠10週で悪心と嘔吐とを主訴に来院した。妊娠7週ごろから悪心と嘔吐とが出現し次第に悪化してきた。1週間前からは経口摂取が困難になり、2日前から自力歩行が困難となったため夫に支えられて来院した。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長161cm、妊娠前体重55kgで現在は48kg。体温36.9℃。脈拍92/分、整。血圧92/56mmHg。呼吸数20/分。皮膚は乾燥している。眼球結膜に黄染を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。尿所見:黄褐色で軽度混濁、蛋白3+、糖1+、ケトン体4 +。血液所見:赤血球396万、Hb 14.1g/dL、Ht 42%、白血球13,100。血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL、AST 30U/L、ALT 22U/L、血糖92mg/dL、Na 126mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 100mEq/L。CRP 0.2mg/dL。経膣超音波検査で子宮内に胎嚢を認める。胎児心拍は陽性で頭殿長〈CRL〉は33mmである。

まず行うべきなのはどれか。

濃厚流動食品の経口投与
胃管からの経腸栄養剤の投与
生理食塩液の大量静脈内投与
20%ブドウ糖液の急速静脈内投与
ビタミンB$_1$を含む維持輸液の静脈内投与

解答: e

112F59の解説

妊娠10週の初産婦の悪心・嘔吐。真っ先に妊娠悪阻を考えることとなる。本患者の場合、尿中ケトン体も4+と高度上昇しており、かなり状態は悪そうだ。ビタミンB1欠乏によるWernicke脳症に留意が必要となる。
a 経口摂取困難、と書いてあり、現実的ではない。
b 経口摂取ができないなら胃管を入れてしまえばよいのでは、と考えるかもしれない。が、本患者に胃管経由で栄養を投与しても嘔吐する可能性が高く、望ましくない。通常は末梢血から点滴静注で栄養を投与する運びとなる。
c 脱水も確実にありそうなので、生理食塩水の輸液自体は悪くない。が冒頭に示したように、ビタミンの補充もしたいわけで、生理食塩水を単味でしかも「大量」静脈内投与するという選択肢は選びにくい。
d ブドウ糖の代謝にはビタミンB1が利用される。そのため、特に低血糖を呈しているわけでもない本患者にブドウ糖液を単味で入れるのは、むしろWernicke脳症のリスクとなりかねない。
e 正しい。ビタミンB1と維持輸液、というバランスの取れた組成であり、投与経路も合わせ、望ましい。

正答率:81%

テーマ:妊娠悪阻に投与すべきもの

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