112A16

50歳の女性。全身の皮下出血と鼻出血とを主訴に来院した。特に誘引なく右肩の紫斑が出現した。その後大腿や下腿にも紫斑が出現し、今朝から鼻出血が止まらないため受診した。5年前に乳癌に対して手術と抗癌化学療法とを受けた。血液所見:赤血球278万、Hb 8.8g/dL、Ht 25%、白血球700、血小板5.1万、PT-INR 1.2(基準0.9〜1.1)、APTT 30.6秒(基準対照32.2)、血漿フィブリノゲン74mg/dL(基準200〜400)、血清FDP 110μg/mL(基準10以下)、Dダイマー9.6μg/mL(基準1.0以下)。骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。

この患者に対する治療薬として適切なのはどれか。

抗エストロゲン薬
全トランス型レチノイン酸
トラネキサム酸
ドセタキセル
へパリン

解答: b

112A16の解説

中年女性の出血傾向。血小板低下とPT, APTTの異常がみられており、これが出血の原因と考えられる。FDPとDダイマー上昇から播種性血管内凝固〈DIC〉を呈していることが読み取れるが、問題はなぜDICを呈しているか、だ。画像ではAuer小体やfaggot細胞を内包する芽球の増加がみられ、急性前骨髄球性白血病〈APL〉(M3)の診断。APLがDICを合併しやすい、というのは頻出事項であり押さえておくべき。
a エストロゲンは本病態と関係ない。
b 正しい。いわゆるATRA療法である。APLの第一選択となる治療で、これによりDICも改善することが知られる。
c 止血薬であるが、対症療法的に用いられるのみで、第一選択とはならない。これ単剤でDICを押さえ込むことも現実的でない。
d タキサン系の抗がん薬。乳癌等に有効だが、APLには無効。
e DICの治療薬として用いられることもあるが、APLを背景としたDICの治療薬としては使用されない。回答者の合格通知から分析するに、本選択肢は禁忌判定された可能性が高い。

正答率:87%

テーマ:播種性血管内凝固〈DIC〉を呈した急性前骨髄球性白血病〈APL〉の治療薬

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