111A55

82歳の女性。傾眠状態のため家族に連れられて来院した。生来健康だったが先月から血尿、口渇、便秘、悪心および食欲不振が出現していた。昨日から傾眠傾向となり増悪するため同居する息子夫婦が自家用車に乗せて連れてきた。身長152cm、体重40kg。体温36.2℃。脈拍80/分、整。血圧142/56mmHg。呼びかけると開眼するが、すぐに閉眼する。眼險結膜は貧血様である。口腔内は著明に乾燥している。頸部と腋窩のリンパ節を触知しない。心尖部を最強点とするIII/VIの収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟。右鼠径部に径約4cm、弾性硬、可動性不良の腫瘤を触知する。尿所見:赤色調、蛋白1+、糖(−)、潜血3+、沈渣に赤血球多数/1視野、異型性の強い上皮細胞多数/1視野。血液所見:赤血球380万、Hb 10.8g/dL、白血球8,100、血小板13万。血液生化学所見:総蛋白5.1g/dL、アルブミン3.2g/dL、総ビリルビン0.7mg/dL、AST 29U/L、LD 283U/L(基準176〜353)、ALP 146U/L(基準115〜359)、尿素窒素23mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、尿酸11.1mg/dL、血糖198mg/dL、HbA1c 6.4%(基準4.6〜6.2)、Na 140mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 99mEq/L、Ca 15.0mg/dL、P 2.5mg/dL。

輸液とともに投与すべきなのはどれか。2つ選べ

アルブミン
インスリン
カルシトニン
ビスホスホネート
副腎皮質ステロイド

解答: c,d

111A55の解説

高齢女性の傾眠傾向。この情報だけからは鑑別が膨大にリストアップされるため、1つ1つ絞り込んでいくこととなる。とはいえ、先月から出現した「口渇、便秘、悪心および食欲不振」からすぐさま受験生の視線は血中Caに移行できたことだろう。Caが補正後に15.8mg/dLと高度上昇しており、一方のPは低値をみている。副甲状腺機能亢進症である。血尿と尿中の異型細胞の出現より腎細胞癌が想定され、ここからPTHrPが放出されたことで惹起された偽性副甲状腺機能亢進症の診断。
a 低アルブミン血症があるも、意識障害の原因はこれではない。
b 高血糖があるも、血症膠質浸透圧はPosm = 2×140+198/18+23/2.8 ≒ 299であり、高度上昇とまでは至っていない。これが意識障害の原因とは考えにくい。
c・d 正しい。骨吸収を抑制すべく、これらの薬剤が有効となる。
e サルコイドーシスなど免疫学的機序による高Ca血症のケースに有効だが、本症例では考えにくい。

正答率:75%

テーマ:偽性副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症の治療

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