*自信は全くありませんので、一意見として御理解下さい*
軸を決めるのに際し、0点がどこかということが重要になるかと思います。
完全に吐ききっても吐ききれない量 (残気量と呼ばれます)が存在し、スパイロメトリーにおいて、その量が読み取れないため( 99D98 などで出題)、
実際のフローボリューム曲線でも、残気量がわからず、0点というのは設定されていない、設定できないのではと思っています。
107H4などでは、0点が存在するように見えますが、それはあくまで問題作成において、回答者が残気量をイメージし易いように設定されているのだと思います。
本問の 108E49の作問者は、完全に吸いきった点を0点としグラフを左詰めにすることで、「実際には表示されない残気量を問題上に表示する」 ということを避けたかったのではないでしょうか。
すなわち、どちらでも良いと思っています。間違えている可能性も多いにありますので、どなたか訂正下さい。
あくまで私個人の理解の仕方ですが......。
なぜ今回の混乱が生じているかというと、ひとえに「絶対肺気量」に統一的な定義が存在しておらず(少なくともインターネットや chat GPT で検索した限りでは)、flow-volume 曲線の作成者によってバラバラの意味付けが為されているからです。
そもそも flow-volume 曲線は、「絶対肺気量」を横軸に、肺から spirometer に向かって吐き出す方向を正とする気流速度(L/秒)を縦軸としています。したがって、「絶対肺気量」の定義によらず、息を吸っているとき(吸気時)には縦軸の値が負なので横軸よりも下に、息を吐いているとき(呼気時)には縦軸の値が正なので横軸よりも上に flow-volume 曲線が描出されることになります。そして、https://medu4.com/topics/cc45020228 の回答でも述べられている通り、flow-volume 曲線から呼吸障害の種類(閉塞性か拘束性か、あるいは混合性か)を判断するために必要なのは呼気時の curve(横軸よりも上の部分)だけであることから、flow-volume 曲線ではしばしば上側部分だけを取り出して描くことが行われます。今回の回答では、ひとまず上側部分だけが描出された(つまり呼気時のみを測定した)flow-volume 曲線を扱うことにしましょう。
さて、以上を前提としたうえで、私の印象だと、「絶対肺気量」の定義には大きく分けて2つの流派が存在するようです。
(1) 「絶対肺気量」= その時点で肺から吐き出されて spirometer に蓄積された空気の量
(例. 108E49、112C38。呼気時も含むものだと、さらに 113F77、119C40)
この場合、呼吸障害の種類にかかわらず、測定開始時には「絶対肺気量」も気流速度も0ですから、点(0,0)からflow-volume 曲線の描出が始まります。横軸の取り方は右方向に(右に向かうほど数値が大きくなるように)設定されることが多く、この設定下でのflow-volume 曲線は、測定の進行とともにspirometer 内の空気の量が増加していくため、右方向に描出されます。
(2) 「絶対肺気量」= その時点で肺の中に存在していると推察される空気の量
(例. 107H4 )
この場合、測定開始時には「絶対肺気量」が 全肺気量〈TLC〉、気流速度が0ですから、点(TLC,0)からflow-volume 曲線の描出が開始します。開始点の位置は呼吸障害の種類によって変動し、閉塞性/拘束性障害では健常時よりもTLCがそれぞれ大きく/小さくなります。横軸の取り方は左方向に(左に向かうほど数値が大きくなるように)設定されることが多く、この設定下でのflow-volume 曲線は、測定の進行とともに肺の中の空気の量が減少していくため、(1)と同様、右方向に描出されます。横軸の取り方が左方向に設定されることが多いのは、おそらく、(1)と(2)でflow-volume 曲線の概形を揃える(左右反転が生じないようにする)ことで、 「絶対肺気量」の定義によらず同じ方法で呼吸障害の種類を診断できるようにするためであると考えられます。
余談ですが、(1) と (2) それぞれの出題例を見比べると分かる通り、近年の国試で出題されることが多いのはもっぱら(1)の方です。これには2つの理由があり、第一には縦軸と横軸の交点を点(0,0)にした方が見栄えが良いから、そして第二には、こちらの方がより本質的な理由になるのですが、上記のたろやんさんの回答でも述べられている通り、(2)の流儀でflow-volume 曲線を描出するためにはTLCの値が必要であるにもかかわらず、TLCの算出に必要な機能的残気量は spirometry では計測できない(99D98で出題歴あり)という深刻な問題が存在するからです。実際、機能的残気量の測定方法には、ガス(ヘリウムまたは窒素)を吸って吐き出してもらい、吸気と呼気のガス濃度を測定する「ガス希釈法」と、密閉された箱の中に入ってもらって肺気量と口腔内圧の変化を測定する「体plethysmograph法」の2種類が存在します(参考:https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201387)が、いずれもspirometry のように簡単にできる検査ではありません。以上の事情から、今後の国試でも(1) のflow-volume 曲線が中心に出題されると予想され、私たちもそれに沿った対策をしておくのが望ましいと考えられます。
長文になってしまいましたが、少しでも皆さまのご参考になりましたら幸いです。また、何かご指摘がございましたら、遠慮なくご教示いただけると有難いです。
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