115C46

36歳の男性について救急車から現場対応の指示を求められた。7月の暑い日の午後1時頃、昼食後に屋外清掃作業に従事していたところ、突然呼吸困難を訴えたため同僚が救急車を要請した。現場到着後、救急救命士が診察にあたったところ、意識レベルはJCS I-2。体温37.5℃。脈拍114/分、整。血圧70/42mmHg。呼吸数36/分。SpO2 80%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。外傷は認めない。顔面は蒼白で口唇に高度の浮腫を認める。頸静脈の怒張を認めない。心音に異常を認めず、心電図上でも頻脈以外の異常を認めない。喘鳴を聴取する。顔面部、胸腹部、背部および四肢の皮膚に膨疹が多発していた。既往に食物アレルギーを指摘されたことがあり、医師から自己注射薬の処方を受けているという。

救急救命士に口頭指示すべき処置はどれか。

気管挿管
クーリング
アドレナリンの筋肉注射
気管支拡張薬の静脈投与
自動体外式除細動器の使用

解答: c

115C46の解説

【プロセス】
①7月の暑い日の午後1時頃
②昼食後に屋外清掃作業
③突然呼吸困難
④血圧70/42mmHg
⑤口唇に高度の浮腫
⑥喘鳴を聴取
⑦皮膚に膨疹が多発
⑧既往に食物アレルギー
⑨医師から自己注射薬の処方を受けている
①②からは一瞬熱中症とも思うが、⑤〜⑦はアナフィラキシー症状であり、熱中症は却下される。⑧⑨よりアナフィラキシーである可能性が濃厚となる。④よりアナフィラキシーショックの状態である。もしかしたら②は「食後の運動」を指しており、食物依存性運動誘発アナフィラキシーを考えさせる誘導なのかもしれない(あるいは考えすぎで単純に昼食にアレルギー物質が含まれていただけかもしれない)。③より緊急対応が必要そうだ。

【選択肢考察】
a 4人に1人が選択してしまった選択肢。「アドレナリンの筋肉注射」を選択できないと消去法でこれを選ばざるを得なくなるため、いささか酷な出題である。結論を言うと、医師の口頭指示のもと救急救命士が気管挿管してよいのは心機能および呼吸機能停止時のみである。本患者はたしかに血圧も低く、SpO2が酸素投与下でも低いのだが、心機能および呼吸機能停止とまでは言えない。ゆえに気管挿管は行わない。もちろん例えば医療機関内で医師が診察している場合に同様の状況となったら、気管挿管が検討される余地はある。
b 熱中症と考えた者への誘導肢。
c 正しい。アナフィラキシーショックに対してまず行うべき対応である。なお、⑨の記載が逆に受験生を苦しめたようだ。つまり、自己注射薬(いわゆる「エピペン」)をすでに処方されているのであれば、医師の指示なしにも本人(JCS I-2とかろうじて自己注射薬は可能そうだ)が注射できるはず。また意識障害が高度で本人に無理な場合、状況次第では家族など第三者が医師の指示なしに注射しても責任は問われない(いわんや救急救命士が注射しても問題ない)。そのため、なぜ敢えて設問文に「救急救命士に口頭指示すべき」と記してあるのか、と考えすぎてしまった者が多かった。この沼にハマると、もはや「気管挿管」を選ばざるを得なくなる。非常にもっともな考察であり、これは出題者の誘導と受験生の思考との相性の問題と言える。ある意味、どうしようもない話であり、諦めよう。問題も悪くないし、あなたも悪くない。運命的な失点であり、他で得点するしかない。
d 救急救命士は気管支拡張薬の静脈投与を行うことができない。
e 心停止状態ではないため、無効。

正答率:76%

テーマ:食物アレルギー患者を診察する救急救命士への口頭指示

フォーラムへ投稿

関連トピック