115C47

34歳の男性。右下腿の外傷のため救急車で搬入された。5時間前に倉庫での荷物運搬の作業中に、崩れた荷物に右下腿を挟まれて受傷した。救急隊による救出までの間、長時間挟まれていたという。意識は清明。体温36.2℃。心拍数96/分、整。血圧85/40mmHg。呼吸数32/分。SpO2 95%(room air)。右下腿に腫脹と変形を認めるが、皮膚の損傷はない。足部の感覚と運動に異常を認めない。その他の部位に外傷はない。尿所見:赤色、蛋白(−)、糖(−)、ケトン体(−)、潜血3+。検査所見:血液所見:赤血球400万、Hb 13.9g/dL、Ht 54%、白血球11,000(桿状核好中球20%、分葉核好中球50%、好酸球1%、好塩基球1%、単球8%、リンパ球20%)、血小板38万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン4.6g/dL、総ビリルビン1.3mg/dL、AST 125U/L、ALT 60U/L、LD 570U/L(基準120〜245)、ALP 343U/L(基準115~359)、CK 6,350U/L(基準30~140)、尿素窒素10.2mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、尿酸7.6mg/dL、血糖98mg/dL、Na 137mEq/L、K 5.1mEq/L、Cl 100mEq/L。CRP 0.84mg/dL。動脈血ガス分析:pH 7.30、PaCO2 25Torr、PaO2 105Torr、HCO3-12mEq/L。右下腿エックス線写真で、脛骨および腓骨の骨幹部骨折を認めた。

今後起こり得る病態として最も注意すべきなのはどれか。

菌血症
急性肝不全
急性腎障害
急性心筋梗塞
急性腸管壊死

解答: c

115C47の解説

【プロセス】
①崩れた荷物に右下腿を挟まれて受傷
②救出まで長時間挟まれていた
③血圧85/40mmHg
④尿は赤色で潜血3+
⑤AST ・LD・CK・K上昇
⑥動脈血ガス分析で代謝性アシドーシスの呼吸性代償
⑦右下腿エックス線写真にて脛骨と腓骨の骨幹部骨折
①②よりクラッシュ症候群を考える。③は循環血液量減少性ショックであろう。④は本疾患でみられることの多いミオグロビン尿。⑤は筋崩壊で説明がつき、高K血症とあわせ⑥も本病態に矛盾しない。⑦により今後コンパートメント症候群が出現する可能性も視野に入れる。

【選択肢考察】
a 外傷を負っており、十分にみられうる。しかし「最も注意すべき」病態ではない。
b AST上昇は筋崩壊による。ALTも確かにやや増加しているも、ショック状態の患者ではむしろ正常値である方が不思議だ。急性肝不全の合併を積極的に懸念することはない。
c 正しい。ミオグロビンが尿細管へ詰まり、急性腎障害をきたす。
d 本疾患とは直接の関係がない。
e 本疾患とは直接の関係がない。

正答率:96%

テーマ:クラッシュ症候群の合併症

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