113D66

20歳の男性。歩行困難のため救急車で搬入された。路上で倒れているところを通行人が発見し救急車を要請した。意識レベルはJCS I-3。体温36.2℃。心拍数72/分、整。血圧112/80mmHg。呼吸数16/分。SpO2 94%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。四肢の筋力低下のため起き上がれない。血液生化学所見:総蛋白7.8g/dL、アルブミン3.8g/dL、尿素窒素12mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、Na 136mEq/L、K 1.9mEq/L、Cl 106mEq/L、Ca 8.8mg/dL、P 2.5mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.24、PaCO2 38Torr、PaO2 88Torr、HCO3- 16.0mEq/L。遅れて来院した家族の話では以前からシンナー(有機溶剤トルエン含有)吸引の習慣があったという。

今後起こりうる可能性があるのはどれか。2つ選べ

下痢
胆管癌
呼吸筋麻痺
腱反射亢進
多源性心室頻拍

解答: c,e

113D66の解説

若年男性の歩行困難。K 1.9mEq/Lと高度低下しており、周期性四肢麻痺が原因として考えやすい。以前からシンナー(有機溶剤トルエン含有)吸引の習慣があったといい、これに起因するI型尿細管性アシドーシス〈RTA〉が低カリウム血症の理由であろう。アニオンギャップ正常タイプの代謝性アシドーシス(高クロール血症をみる)が出現していることも合わせて確認。
a 下痢でも低カリウム血症と代謝性アシドーシスをみる。が、今回の病態とは全く別の話。
b 印刷業におけるジクロロプロパン(これもシンナーと同じく有機溶剤の一種)曝露により胆管癌がみられる(See 112F60)。が、これも今回の病態とは全く別の話。
c 正しい。低カリウム血症により筋力低下が起こる。呼吸筋麻痺もみられうる。
d トルエン中毒では中枢神経障害がみられる。上位運動ニューロンが障害されれば腱反射亢進も予想される。そのため本選択肢を選んだ受験生も多かった。が、そうは問屋がおろさないのである。周期性四肢麻痺では腱反射が減弱する。そのため例え中枢神経障害が今後出現したとしても、腱反射亢進まではみられない。
e 正しい。低カリウム血症によりQT延長症候群がみられる。これにより、多源性心室頻拍〈多形性心室頻拍;TdP〉が出現しうる。
※トルエン中毒でI型RTAが出現するという事実がある。が、本問の誘導をみるに、出題者はそこまでの知識は要求していないと思われる。

正答率:40%

テーマ:シンナー中毒で起こりうること

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