113A16

68歳の女性。1年前にS状結腸癌(病期III)と診断されS状結腸切除術およびリンパ節郭清術を施行された。術後の補助化学療法を勧められたが、治療を受けず来院していなかった。1週間前に腹痛を自覚し軽快しないため受診した。意識は清明。身長158cm、体重50kg。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。 臍周囲に自発痛と軽度の圧痛とを認める。血液所見:赤血球385万、Hb 10.9g/dL、Ht 37%、白血球5,100、血小板14万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、AST 54U/L、ALT 48U/L、ALP 722U/L(基準115~359)、γ-GTP 264U/L(基準8~50)、CEA 78ng/mL(基準5以下)、CA19-9 350U/mL(基準37以下)。CRP 2.8mg/dL。腹部造影CTを別に示す。

行うべき治療はどれか。

肝移植
肝切除
放射線照射
抗癌化学療法
経カテーテル的動脈化学塞栓術〈TACE〉

解答: d

113A16の解説

高齢女性のS状結腸癌肝転移。腹部造影CTでは右葉に大きな転移巣が、そして左葉にも小さな転移巣が複数みられる。さらには肝に隣接する腸管の肥厚もみられ、小腸への浸潤も疑われる。大腸癌の肝(or 肺)転移の手術適応をまとめておこう。
 (1) 手術に耐用可能
 (2) 原発巣が制御済 or 制御可能
 (3) 転移巣を遺残なく切除可能
 (4) 肝(or 肺)外の転移がない or 制御可能
 (5) 術後の十分な肝(or肺)機能残存が見込める。
上記をすべてみたす必要がある。
本症例では両葉に渡っており、(5)が不可能だ。また、小腸浸潤があるとしたら(4)もみたさない。ゆえに手術適応はない。
a 転移性肝癌は肝移植の適応とならない。
b 上記の通り、肝切除の適応とはならない。
c 緩和治療の一環として考慮されることはあるも、メインの治療とはならない。
d 正しい。手術不可能な転移性肝癌の第一選択は抗癌化学療法である。
e 転移性肝癌はTACEの適応とならない。
112A62で肺転移の問題が出ており、これも類似の考え方を利用するため参考になる。

正答率:64%

テーマ:転移性肝癌の治療

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