112E44

次の文を読み、44、45の問いに答えよ。

86歳の男性。右胸部痛と食欲不振とを主訴に来院した。

現病歴:10年前からCOPDのために外来通院中であった。2週間前から微熱、全身倦怠感および食欲不振を自覚していた。昨日、右胸部痛が出現し、本日夜間に39.0℃の発熱と右胸部痛が増悪したため、救急外来を受診した。

既往歴:COPDと高血圧症のため通院中である。

生活歴:妻および長男夫婦と同居している。喫煙は20本/日を70歳まで50年間。飲酒はビール350mL 2、3本/日を50年間。

家族歴:特記すべきことはない。

現 症:意識は清明。身長160cm、体重52kg。体温38.8℃。脈拍100/分、整。血圧120/68mmHg。呼吸数24/分。SpO2 86%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔と咽頭とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺と頸部リンパ節とを触知しない。心音に異常を認めないが、右胸部で呼吸音が減弱している。打診では右肺で濁音を呈する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢の筋力は保たれている。腱反射に異常を認めない。

検査所見:血液所見:赤血球355万、Hb 12.1g/dL、Ht 36%、白血球16,500(桿状核好中球25%、分葉核好中球65%、好酸球1%、単球2%、リンパ球7%)、血小板40万。血液生化学所見:総蛋白5.9g/dL、アルブミン2.2g/dL、AST 29U/L、ALT 18U/L、LD 173U/L(基準176〜353)、ALP 223U/L(基準115〜359)、γ-GTP 44U/L(基準8〜50)、CK 260U/L(基準30〜140)、尿素窒素35mg/dL、クレアチニン1.6mg/dL、血糖161mg/dL、HbA1c 5.7%(基準4.6〜6.2)、Na 131mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 97mEq/L、Ca 8.4mg/dL。CRP 31mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.55、PaCO2 32Torr、PaO2 56Torr、HCO3- 28mEq/L。心電図で異常を認めない。臥位のポータブル胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B、C)とを別に示す。

この画像所見をきたす原因として最も考えられるのはどれか。

低アルブミン血症
肺癌の胸膜播種
横隔神経麻痺
細菌感染
腎不全

解答: d

112E44の解説

COPDで通院中の高齢男性。2週前から炎症症状が出現しており、急性増悪を第一には疑う。が、右胸部痛が存在することや同部位の打診で濁音が聴取されていることなどから非典型的である。診断の鍵は画像であろう。Aでは右肺の透過性が著しく低下し、B, Cでは右肺背側に壁構造をもった領域の存在が指摘できる。出現した構造は臓側胸膜と壁側胸膜に挟まれているようにみえ(split pleura signと呼ばれる)、肺外に存在する可能性が高い。このことから膿胸の診断となる(肺内に膿が貯留した肺膿瘍と区別せよ)。
a 低アルブミン血症では胸水貯留はみることがある。が、膿胸はきたさない。
b 肺癌の胸膜播種ではこれほどまで大きな壁構造を持った物体は出現しない。
c 横隔神経麻痺では横隔膜の挙上をみる。が、膿胸はきたさない。
d 正しい。好中球上昇やCRP高値などからも細菌感染であることは歴然である。
e クレアチニンの上昇は確かにみられているも、腎不全単独で膿胸はきたさない。

正答率:85%

テーマ:【長文1/2】膿胸の原因

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