112A23

71歳の女性。発熱と下腿浮腫とを主訴に来院した。65歳時から2型糖尿病のため自宅近くの医療機関に通院中である。これまで網膜症は指摘されていない。1か月前から37℃台の微熱があり、両側の下腿浮腫を自覚するようになった。かかりつけ医で血尿と蛋白尿とを指摘され、精査のために紹介されて受診した。体温37.6℃。脈拍92/分、整。血圧146/88mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98% (room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。両側の下腿に浮腫と網状皮斑とを認める。左下腿の温痛覚の低下を認める。尿所見:蛋白3+、潜血3+、沈渣に赤血球50〜100/1視野、白血球10〜20/1視野、赤血球円柱を認める。血液所見:赤血球324万、Hb 10.0g/dL、Ht 31%、白血球10,300(桿状核好中球20%、分葉核好中球52%、好酸球1%、好塩基球1%、単球3%、リンパ球22%)、血小板22万。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、アルブミン2.3g/dL、尿素窒素40mg/dL、クレアチニン2.5mg/dL、血糖98mg/dL、HbA1c 5.8%(基準4.6〜6.2)、Na 138mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 100mEq/L。免疫血清学所見:CRP 6.5mg/dL、リウマトイド因子〈RF〉陰性、抗核抗体陰性、MPO-ANCA 84U/mL(基準3.5未満)、PR3-ANCA 3.5U/mL未満(基準3.5未満)。胸部エックス線写真で異常を認めない。腎生検のPAS染色標本を別に示す。

この患者でまず行うべき治療はどれか。

血液透析
血漿交換
ビタミンB12製剤投与
メトトレキサート投与
副腎皮質ステロイド投与

解答: e

112A23の解説

高齢女性の発熱と下腿浮腫。糖尿病の背景がある、とのことで尿蛋白からはネフローゼ症候群も鑑別に挙がる。が、発熱があり、血尿もあることからネフローゼ症候群では説明がつかなそうだ。左下腿の温痛覚低下(ニューロパチー)がみられていること、皮疹(網状皮斑)がみられていることからは血管炎を考えたい。MPO-ANCAが高値で、画像では(全周性の病変となっており半月体にはみえにくいかもしれないが)半月体形成性糸球体腎炎がみられる。顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の診断。
a 血中K、尿素窒素、クレアチニン等から総合的に考え、血液透析が必要な状況とは判断されない。
b・c MPAの治療としては用いられない。
d アザチオプリンやメトトレキサートといった免疫抑制薬を副次的に用いることはあるが、第一選択とはならない。
e 正しい。副腎皮質ホルモン投与が第一選択である。

正答率:90%

テーマ:顕微鏡的多発血管炎〈MPA〉の治療

フォーラムへ投稿

関連トピック