110I59

74歳の男性。肺癌の診断で左上葉切除とリンパ節郭清術とを行い入院中である。術後8日目に呼吸困難を訴え発熱も出現した。現在、身長168cm、体重63kg。体温38.3℃。脈拍116/分、整。血圧106/74mmHg。呼吸数20/分。両側の胸部でfine cracklesを聴取する。血液所見:赤血球418万、Hb 11.4g/dL、Ht 35%、白血球15,300(桿状核好中球10%、分葉核好中球70%、好酸球2%、好塩基球1%、単球3%、リンパ球14%)、血小板13万、Dダイマー0.8μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、アルブミン2.9g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、直接ビリルビン0.5mg/dL、AST 35U/L、ALT 16U/L、LD 420U/L(基準176〜353)、ALP 127U/L(基準115〜359)、尿素窒素25mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL。CRP 15mg/dL。動脈血ガス分析(マスク8L/分 酸素投与下):pH 7.25、PaCO2 35Torr、PaO2 84Torr、HCO3- 15mEq/L。術前の胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B)及び術後8日目の胸部エックス線写真(C)と胸部CT(D)とを別に示す。心エコー検査で、左室壁の運動は良好であり心機能低下を認めない。
可能性の高い疾患はどれか。
膿胸
無気肺
気管支断端瘻
肺血栓塞栓症
急性呼吸促迫症候群〈ARDS〉

解答: e

110I59の解説

肺癌の術後8日目という急性期をすぎたころに発生した呼吸困難と発熱。fine cracklesを聴取していることとC, Dの画像からは肺の線維化をみてとれる。心エコー検査より心原性の病態は否定的。非心原性の肺水腫である、急性呼吸窮迫症候群〈ARDS〉が考えやすい。
a 肺外の病変である。
b 術直後のA, Bでは切除された肺の部分が痕跡となっており含気が低下している。しかし、これは現在の病態ではない(C, Dからも無気肺は指摘できない)。
c 気管支断端瘻であれば、リークしたairが縦隔内等に描出されるはずである。
d 肺血栓塞栓症であればDダイマーが高値となる。また、肺内の線維化はみない。
e 正しい。上記の通り。

正答率:56%

テーマ:急性呼吸窮迫症候群〈急性呼吸促迫症候群〉〈ARDS〉の診断

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