117F64

その後、SpO2 86%に低下したため、ストレッチャーに移動し、マスク5L/分の酸素投与を行った。喘鳴はやや改善したが、呼吸困難は続いていた。意識レベルはJCS II-10。心拍数130/分、整。血圧152/82mmHg。呼吸数28/分。動脈血ガス分析(マスク5L/分 酸素投与下):pH 7.30、PaCO2 86Torr、PaO2 92Torr、HCO3- 36mEq/L。
適切な治療法はどれか。
気管切開
気管挿管
高流量酸素
高気圧酸素治療
非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉

解答: e

117F64の解説

【プロセス】
⑫SpO2 86%に低下したため、マスク5L/分の酸素投与
⑬意識レベルはJCS II-10(悪化;1問目では意識清明)
⑭呼吸数28/分(↑;1問目では24/分)
⑮pH 7.30(↓;1問目では7.41)
⑯PaCO2 86Torr(↑;1問目では54Torr)
⑰PaO2 92Torr(↑;1問目では56Torr)
☞アシデミア(⑮)、CO2貯留の増悪(⑯)と同時に意識レベルの低下(⑬)がみられている。⑫のおかげで酸素状態は改善(⑰)されているが、CO2ナルコーシスに至ってしまったようだ。さすがに1問目の状況からいきなりマスク5L/分の酸素投与を行うとは思えない(いきなりの高濃度酸素投与が原因でCO2ナルコーシスに至ったのであれば医療事故である)ので、おそらく2問目と3問目の間には割愛されているエピソードがあるのだろう(「その後」という表現が巧みに用いられている印象)。最善を尽くしても回避不能なCO2ナルコーシスであったと信じたい。

【選択肢考察】
a 気管切開は上気道閉塞により気管挿管が困難な場合や、人工呼吸管理が長期化する可能性の高い際に導入する。
b 半数弱の者が気管挿管を選んだ。過去問を多く解いていると、問題のフォーマット的なものが頭に染み付いてくる。たしかにこの問題の流れ的には気管挿管だ。が、111E38-bでも出題があるように、COPD急性増悪に対してはNPPVが有効となる。⑬⑭をみても、たしかに意識レベルの低下や呼吸数増加があるも、JCS 3桁や呼吸抑制には至っていない(分かりやすく過去問と対比するなら、気管挿管が正解となったCO2ナルコーシスの問題である111I46では呼吸数12/分、113C46では呼吸数8/分)。ゆえに本人の協力下で、自発呼吸を尊重したNPPVが本問では優先される。「問題フォーマット」が善か悪か、は何とも言えない。国試の大半は過去問の焼き直しであるため、フォーマットを体得していることで多くの問題への適合性がupし、得点力が上がることは間違いないだろう。が、フォーマットを盲信しすぎても、本問のように足元をすくわれることがある。何事もほどほどに。常にプランBを用意しておくことが大切である。ここでいうプランBとは何か? それはゼロベースで考察をイチから組み立てる、思考力そのものである。
c 高流量酸素は「追い打ち」になりかねない。★禁忌★。
d 高気圧酸素治療はガス壊疽や突発性難聴、一酸化炭素中毒に有効。加圧した状況下で酸素吸入をするため、CO2ナルコーシスに用いた場合、高流量酸素投与と同じ結果になるため危険である。
e 正しい。COPD急性増悪に対してはNPPVが有効。文字通り「非侵襲的」であるため、まず試みるべき治療法であろう。これが無効だった場合に気管挿管へ移っても遅くはない。

正答率:53%

テーマ:【長文3/3】CO2ナルコーシスの治療法

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