111I46

76歳の女性。発熱と呼吸困難とを主訴に来院していたが、待合室でぐったりして呼びかけに応じない状態で発見された。5年前から労作時呼吸困難のため自宅近くの診療所に通院していたが、2か月前から通院を自己判断で中断していた。3日前から咳嗽、膿性痰および37.5℃の発熱が出現し、今朝から呼吸困難が出現したため救急外来を受診した。喫煙は71歳まで40本/日を50年間。来院時、意識は清明。脈拍96/分、整。血圧132/88mmHg。呼吸数20/分。SpO2 82%(room air)。口唇にチアノーゼを認めた。呼吸音は減弱し、左胸部にrhonchiを聴取した。下腿に浮腫を認めなかった。鼻カニューラで2L/分の酸素投与を開始し、胸部エックス線撮影を行った。その30分後に、血液検査のため順番を待っていた待合室で倒れていたところを発見された。発見時、脈拍124/分、整。血圧162/108mmHg。呼吸数12/分。動脈血ガス分析(鼻カニューラ2L/分酸素投与下):pH 7.17、PaCO2 102Torr、PaO2 69Torr。胸部エックス線写真を別に示す。

適切な処置はどれか。

気管挿管
胸腔ドレナージ
非侵襲的陽圧換気〈NIPPV〉
鼻カニューラ1L/分酸素投与に変更
リザーバー付マスク10L/分酸素投与に変更

解答: a

111I46の解説

発熱、呼吸困難、意識障害を認める76歳女性。40本/日×50年間の喫煙歴があり労作時呼吸困難を認めていることから慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の背景を考える。胸部エックス線では肺の過膨張と左少量胸水とがみられることからCOPDの存在は確実そうだ。この状況下で咳嗽と喀痰、発熱を認めていることから、感染契機にCOPD急性増悪をきたした可能性が高い。血液ガス分析にてPaCO2の高度上昇とPaO2の低下を認め、CO2ナルコーシスによる意識障害を呈している。
a 正しい。意識障害を呈しており直ちに気管挿管を行う。
b 気胸や膿胸、大量な胸水に有効。
c NIPPVは文字通り、非侵襲的なマスク換気であり、意識があり自発呼吸がしっかりしている患者に有効となる。
d 酸素2L/分投与下でもPaO2は低いので、ここからさらに酸素を下げては酸素不足に拍車がかかってしまう。
e CO2ナルコーシスの状態で酸素を上げては呼吸抑制に拍車がかかってしまう。禁忌。

正答率:40%

テーマ:CO2ナルコーシスへの処置

フォーラムへ投稿

関連トピック