116F48

69歳の男性。胸痛を主訴に来院した。糖尿病性腎症に起因する慢性腎不全で半年前から1回4時間、週3回の血液透析を受けている。本日、通常通り血液透析を終了して帰宅した。帰宅後にテレビを見ていると急に左前胸部痛と冷汗が出現し、改善しないため家族の運転する車で救急外来を受診した。来院時も同様の症状が持続している。意識は清明。表情は苦悶様。身長168cm、体重67kg(透析直後体重65.8kg)。脈拍100/分、整。血圧156/88mmHg。SpO2 96%(room air)。1日尿量は500mL程度である。心音と呼吸音に異常を認めない。左前腕に血管雑音を聴取する。心電図のII、III、aVF誘導に2mmのST上昇を認める。

最も適切な対応はどれか。

利尿薬を投与する。
冠動脈造影を施行する。
緊急血液透析を施行する。
自宅での経過観察を指示する。
上肢の超音波検査を施行する。

解答: b

116F48の解説

【プロセス】
①高齢男性
②糖尿病性腎症に起因する慢性腎不全で血液透析中
③テレビを見ていると急に左前胸部痛と冷汗が出現し、改善しない
④1日尿量は500mL程度
⑤左前腕に血管雑音を聴取する
⑥心電図のII、III、aVF誘導に2mmのST上昇
☞③⑥より急性心筋梗塞〈AMI〉が考えやすい。①や糖尿病(②)は冠危険因子である。

【選択肢考察】
a ④は健常人としては少ないが、血液透析中であり、かつ本文から体内の水分貯留も読み取れない。ゆえに利尿薬で水を抜く必要はない。
b 正しい。AMIの診断のため、冠動脈造影が有効。
c すでに透析は実施済みであり、不要。AMIの治療にもならない。
d AMIが疑われる状況であり、帰宅はNG。
e ⑤は血液透析用のシャントによるものであり、病的所見ではない。

正答率:84%

テーマ:急性心筋梗塞〈AMI〉を疑う慢性腎臓病〈CKD〉患者への対応

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