114F63

次の文を読み、以下の問いに答えよ。

86歳の女性。発熱を主訴に来院した。

現病歴:2日前に長男が患者に連絡した際「風邪をひいている」との訴えがあった。本日長男が連絡した際に電話がつながらなかったため長男が訪問したところ、発熱があり食事も摂れず布団の中でぐったりしていた。長男に付き添われて来院した。

既往歴:70歳から2型糖尿病で内服加療中。82歳時に脳梗塞を発症、後遺症による左下肢不全麻痺がある。

生活歴:1人暮らしをしており、近所に住む息子が週2〜3回訪問していた。

家族歴:妹が脂質異常症。

現 症:意識レベルはGCS 14(E4V4M6)。身長150cm、体重38kg。体温38.2℃。脈拍100/分、整。血圧120/72mmHg。呼吸数20/分。SpO2 99%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腋窩は乾燥している。体表に外傷は認めなかったが、左大転子部に発赤を認める。

検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖2+、潜血(−)。血液所見:赤血球490万、Hb 16.0g/dL、Ht 47%、白血球9,000(好中球60%、リンパ球40%)、血小板36万。血液生化学所見:尿素窒素56mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、随時血糖360mg/dL、HbA1c 8.0%(基準4.6〜6.2)、Na 130mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 91mEq/L。CRP 0.3mg/dL。頭部CTで陳旧性脳梗塞を認める。

この患者について正しいのはどれか。

高張性脱水である。
血漿浸透圧は低下している。
尿比重は低いことが予測される。
ケトアシドーシスの存在が予測される。
尿素窒素/クレアチニン比が低下している。

解答: d

114F63の解説

高齢女性の発熱。2型糖尿病をすでに指摘されており、随時血糖とHbA1cをみる限り、コントロールは良くない。腋窩に乾燥があり、脱水が読み取れることから、糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉または高浸透圧高血糖症候群〈HHS〉に至っている可能性が高い。脳梗塞後遺症で左下肢不全麻痺があるためであろう、左大転子部に褥瘡と思しき発赤を認めている(次の問題で画像とともに扱われることとなる)。
a Naは130mEq/Lと低値であり、高張性脱水ではない。高張性か低張性か、の判別は血漿浸透圧ではなく、血中Naの値で行われることに注意しよう。
b 推測式(血漿浸透圧=2Na+血糖値/18+尿素窒素/2.8)に与えられた値を代入すると、血漿浸透圧は300mOsm/kgH2Oと算出される。これは基準値上限を超えている。
c 尿糖陽性であり、尿比重は高いことが予想される。
d 正しい。冒頭でも述べたように、DKAまたはHHSが考えやすい。HHSであれば通常、血漿浸透圧が320〜350mOsm/kgH2O以上となる。本症例では300mOsm/kgH2Oであるため、DKAの可能性がより高い。が、尿ケトン体や動脈血ガス分析の値を提示せずにDKAと絞らせるのは微妙な出題であり、採点除外問題となった。
e 脱水により、尿素窒素/クレアチニン比は56÷1.2=46.666...と上昇している。

正答率:49%

テーマ:【長文1/3】糖尿病性ケトアシドーシス〈DKA〉について

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