拙文失礼いたします。
aに関して;この症例では血漿浸透圧は計算すると300となり、Naは130でありますが高張性脱水といわれると間違ってはないかなと考えてしまいます。
dに関して;dが間違ってなさそうな理由は理解できます。糖尿病の既往がある86歳の女性が感冒を契機に意識障害をきたし、バイタルサインの乱れ、血糖高値などからDKA・HHSを疑います。そしてAG=Na-(Cl+HCO3⁻)より本症ではNa-Cl=39>36となりAGの開大もしくはHCO3⁻の上昇が示唆され、「ケトアシドーシスの存在が予測される」と書かれてしまうと×にはできないかなと考えました。
この問題から正答を導くことは出来ない、とした理由がなんとなくわかるような気がしますが、、ご意見ご指導等いただけると幸いです。
現病歴と既往歴を見ると最も考えやすいのは2型糖尿病患者が体調を崩したことによる疾患です。血糖値が360と高度上昇したことからシックデイ対応が上手くいかず糖尿病性ケトアシドーシスとなったのではないかと考えられます。以下意見です。
aについて、高張性脱水は水分優位に喪失することで高Naとなりますが、Naだけを見ると低値でありNa喪失優位の低張性であるかのように見えます。血漿浸透圧が高いのにNaが低いことについては血糖が高いことから水分が間質から流入してNa低値となったことが考えられます。従ってもとは高張性脱水と考えてよさそうです。
高脂血症、高血糖などでは血清浸透圧が上昇し、水分を血管内へ引き込むことにより、Na濃度が低下します。血糖値が100mg/dL上昇するごとに血清Na値は1.6mmol/L低下するといわれています。
http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/173.htmlより引用
Hiller,1999の式(上の説明の1.6が2.4になったもの)を用いて補正すると実際のNaは136になります。ですから来院時は代謝機転により浸透圧が補正されています。
dの選択肢は、尿ケトン体の存在が予測される、あるいはアシドーシスの存在が予測されるとするべきだったのだと思います。臨床文を見てケトアシドーシスを疑ったら、Kussmaul呼吸の有無や呼気がアセトン臭なのかどうか、などが気になります。尿中ケトン体の有無や尿比重、血ガスなどの所見も欲しいところです。これらの情報を集める段階をカットしてケトアシドーシスの存在を予測するのは流石に無理があります。
総合すると、臨床文からDKAと分かるだろうという臨床文ありきの問題になっているためこのような齟齬が生じているのだと思います。糖尿病患者が体調を崩したら血糖コントロールが不安定になる→低血糖や高血糖になりやすいと言う点を抑えておくのがこの問題の意義だと考えました。
Haku96さん、本当にありがとうございます。
ログインするとコメントを投稿することができます。
次の文を読み、以下の問いに答えよ。
86歳の女性。発熱を主訴に来院した。
現病歴:2日前に長男が患者に連絡した際「風邪をひいている」との訴えがあった。本日長男が連絡した際に電話がつながらなかったため長男が訪問したところ、発熱があり食事も摂れず布団の中でぐったりしていた。長男に付き添われて来院した。
既往歴:70歳から2型糖尿病で内服加療中。82歳時に脳梗塞を発症、後遺症による左下肢不全麻痺がある。
生活歴:1人暮らしをしており、近所に住む息子が週2〜3回訪問していた。
家族歴:妹が脂質異常症。
現 症:意識レベルはGCS 14(E4V4M6)。身長150cm、体重38kg。体温38.2℃。脈拍100/分、整。血圧120/72mmHg。呼吸数20/分。SpO2 99%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腋窩は乾燥している。体表に外傷は認めなかったが、左大転子部に発赤を認める。
検査所見:尿所見:蛋白(−)、糖2+、潜血(−)。血液所見:赤血球490万、Hb 16.0g/dL、Ht 47%、白血球9,000(好中球60%、リンパ球40%)、血小板36万。血液生化学所見:尿素窒素56mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、随時血糖360mg/dL、HbA1c 8.0%(基準4.6〜6.2)、Na 130mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 91mEq/L。CRP 0.3mg/dL。頭部CTで陳旧性脳梗塞を認める。
この患者について正しいのはどれか。