114A72

61歳の男性。心窩部痛を主訴に救急車で搬入された。7日前に腰痛を自覚し自宅近くの診療所でNSAIDを処方されていた。今朝急に心窩部痛が出現し急速に増強するため救急車を要請した。意識は清明。身長173cm、体重67kg。体温36.0℃。心拍数88/分、整。血圧124/80mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(鼻カニューラ3L/分酸素投与下)。腹部は平坦で、心窩部に圧痛と軽度の反跳痛とを認める。血液所見:赤血球483万、Hb 15.7g/dL、Ht 47%、白血球14,700、血小板30万。血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL、アルブミン4.2g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 20U/L、ALT 15U/L、LD 170U/L(基準120〜245)、ALP 265U/L(基準115〜359)、γ-GT 66U/L(基準8〜50)、アミラーゼ52U/L(基準37〜160)、CK 85U/L(基準30〜140)、尿素窒素17mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、血糖103mg/dL、Na 146mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 106mEq/L。CRP 2.2mg/dL。腹部単純CTを別に示す。まずは手術を実施せず、保存的治療を行うこととした。

対応として適切なのはどれか。3つ選べ

抗菌薬投与
経鼻胃管留置
高圧酸素療法
腹部血管造影
プロトンポンプ阻害薬投与

解答: a,b,e

114A72の解説

NSAID服用からの、急な心窩部痛。消化性潰瘍からの出血や穿孔を考えたい。画像ではfree airがみられ、消化管穿孔の診断となる。まずは保存的治療を行うこととしたようだ。
a 正しい。腹膜炎を呈しており、抗菌薬投与は必須。
b 正しい。内容物の吸引とそれによる消化管の減圧を図るべく、経鼻胃管留置が有効。
c 突発性難聴など一部疾患に特異的に用いられる治療法であり、消化管穿孔や腹膜炎には無効。
d 活動性の消化管出血が存在する場合に、原因血管の同定と動脈塞栓を行うことが可能。しかるに本症例は穿孔なわけで、出血ではない(赤血球数やHb、血圧をみても分かるだろう)。ゆえに無効。
e 正しい。消化性潰瘍の治療に有用。

正答率:63%

テーマ:非ステロイド性抗炎症薬〈NSAID〉による消化管穿孔への対応

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