113D75

83歳の女性。全身倦怠感を主訴に来院した。高血圧症と骨粗鬆症で自宅近くの診療所に通院し、サイアザイド系利尿薬と経口活性型ビタミンD3製剤を処方されていた。1か月前から腰痛が出現したためNSAIDsを処方され服用していたが、座位や歩行で疼痛が悪化するため、日中も臥床していることが多かった。2週間前から食欲がなく、食事は少量ずつ1日2食で、水分摂取も小さな湯呑茶碗でお茶を1日2~3杯飲む程度だった。3日前から全身倦怠感が出現し、次第に悪化したため受診した。4日前から排便がないが、排尿回数は日中5回、夜間2回で変化はなかった。意識は清明。身長152cm、体重41kg(1か月前45kg)。体温36.2℃。脈拍108/分、整。血圧152/86mmHg。尿所見:比重1.008、蛋白(±)、糖(-)、潜血1+、沈渣は赤血球1~4/HPF、白血球1~4/HPF、細菌(±)。血液所見:赤血球450万、Hb 15.2g/dL、Ht 45%、白血球6,800、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dL、アルブミン3.9g/dL、AST 22U/L、ALT 18U/L、LD 250U/L(基準176~353)、CK 152U/L(基準30~140)、尿素窒素52mg/dL、クレアチニン2.8mg/dL、eGFR 13mL/分/1.73m2、Na 135mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 102mEq/L。CRP 0.1mg/dL。

腎機能障害の原因として考えられるのはどれか。3つ選べ

脱水
NSAIDs
尿路感染症
横紋筋融解症
高カルシウム血症

解答: a,b,e

113D75の解説

高齢女性の全身倦怠感。クレアチニン2.8mg/dLと上昇しており、eGFRは13とCKDの重症度分類G5にある。この原因を選択肢と本文とを見比べて探っていく良問。
a 正しい。「2週間前から食欲がなく、食事は少量ずつ1日2食で、水分摂取も小さな湯呑茶碗でお茶を1日2〜3杯飲む程度」とあり、脱水は存在するものと思われる。脱水により腎前性腎不全をみる。
b 正しい。「1か月前から腰痛が出現したためNSAIDsを処方され服用していた」とある。NSAIDsが腎障害性をもつ薬剤であることを再確認されたい。
c 体温36.2℃、CRP 0.1mg/dLといった記載からは感染症の存在は考えにくい。また、尿沈渣で白血球1〜4/HPFと膿尿もないため、尿路感染症は否定的。
d CKはたしかに微増しているが、これは長期臥床による筋崩壊や、腎機能低下による排出低下によるものが考えやすい。横紋筋融解症ではCKが高度上昇する(See 106G42)。
e 正しい。「経口活性型ビタミンD3製剤を処方されていた」とのことで、腎不全によりCa排泄低下と合わせ、高Ca血症を呈している可能性が高い。高Ca血症では尿崩症となり、脱水に拍車がかかる。脱水により腎前性腎不全をきたす。なお、高Ca血症では便秘傾向となるため「4日前から排便がない」も説明がつく。

正答率:81%

テーマ:腎機能障害の原因

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