113D63

30歳の女性。発熱、全身倦怠感と悪心を主訴に来院した。15歳時に全身性エリテマトーデス〈SLE〉とループス腎炎(WHO分類IV型)を発症し、数度の再燃を繰り返していた。3週間前の定期受診時には、症状、身体所見および検査上に異常を認めず、プレドニゾロン5mg/日、アザチオプリン100mg/日の内服継続を指示された。5日前に発熱、悪心および左腰背部痛が出現し、自宅近くの医療機関を受診した。尿所見:蛋白1+、潜血1+、白血球3+、細菌3+。血液所見:白血球12,000。CRP 8.8mg/dL。尿路感染症と診断され、レボフロキサシンを内服し、2日後に解熱した。しかし、昨日から全身痛と悪心が出現したため受診した。最終月経は10日前から5日間。意識は清明。体温37.6℃。脈拍92/分、整。血圧88/50mmHg。呼吸数24/分。SpO2 99%(room air)。皮膚粘膜疹を認めない。Jolt accentuationを認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。関節腫脹や可動域制限を認めない。肋骨脊柱角の叩打痛を認めない。尿所見:蛋白(-)、白血球1~4/HPF、赤血球1~4/HPF、細菌(-)。血液所見:白血球4,500。血液生化学検査:尿素窒素14mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、血糖77mg/dL、Na 124mEq/L、K 5.1mEq/L、Cl 92mEq/L、TSH 1.2μU/mL(基準0.5~5.0)、FT4 1.0ng/dL(基準0.9~1.7)。CRP 3.1mg/dL。自宅近くの医療機関での血液培養の結果は2セット陰性であった。生理食塩液の輸液を開始した。

次に行うべき対応はどれか。

フロセミドの静注
アザチオプリンの増量
甲状腺ホルモンの補充
カルバペネム系抗菌薬投与
ヒドロコルチゾン静脈内投与

解答: e

113D63の解説

プレドニゾロン(副腎皮質ステロイド)の内服中に尿路感染症と診断された壮年女性の発熱と全身倦怠感、悪心。このパターンではステロイドが服用できていないことによるステロイド離脱症候群またはシックデイによる相対的ステロイド不足を考え、副腎クリーゼを想起すべきである。副腎皮質機能低下により、血圧低下、低ナトリウム血症、高カリウム血症がみられる。
a 血圧が低下しており、輸液しながらとはいえ、フロセミド静注をすると循環血液量が減少してしまう。また、低ナトリウム血症も増悪が懸念される。
b アザチオプリンは今回の病態と関係がない。
c 甲状腺ホルモンは基準値内にあるため、補う必要はない。
d 解熱済みかつ血液培養は陰性であり、尿路感染症は治癒したと考えられる。抗菌薬投与は不要。
e 正しい。ヒドロコルチゾンは副腎皮質ステロイドの1つであり、副腎クリーゼに投与すべき薬剤である。

正答率:92%

テーマ:副腎クリーゼへの対応

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