111G40

53歳の男性。人間ドックで血糖値と尿検査の異常とを指摘されたため来院した。これまで健康診断を受けておらず、2か月前に初めて受けた人間ドックで異常を指摘されて受診した。喫煙歴と飲酒歴はない。家族歴は母親が2型糖尿病で内服治療中である。身長172cm、体重65kg。脈拍68/分、整。血圧130/70mmHg。下腿に軽度の浮腫を認める。他の身体所見に異常を認めない。尿所見:蛋白3+、糖1+、ケトン体(−)。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、アルブミン3.2g/dL、クレアチニン1.5mg/dL、空腹時血糖168mg/dL、HbA1c 8.3%(基準4.6〜6.2)、総コレステロール235mg/dL、トリグリセリド250mg/dL、HDLコレステロール55mg/dL。管理栄養士が妻と本人とに面談して1週間分の献立を分析した。1日総エネルギー量1,820kcal(糖質40%、蛋白質35%、脂質25%)、1日塩分量6g、1日コレステロール量290mg、1日食物繊維量21g。

この患者への食事指導として最も適切なのはどれか。

塩分量を減少させる。
食物繊維量を増加させる。
蛋白質の割合を減少させる。
総エネルギー量を減少させる。
コレステロール量を減少させる。

解答: c

111G40の解説

空腹時血糖≧126mg/dL、HbA1c≧6.5%より糖尿病の診断。尿蛋白と尿糖もあり、腎障害が出現している。また、総コレステロール≧220mg/dL、トリグリセリド≧150mg/dLより脂質異常症の診断もつく。LDLコレステロールはFriedwaldの公式より、235−250÷5−55=130mg/dLと算出され、高LDLコレステロール血症はみられない。この患者への食事指導を問う問題。
a 1日塩分量は6gであり、これ以上の減量は必要ない。
b 1日食物繊維量は20g以上であり、これ以上の増量は必要ない。
c 正しい。糖質:蛋白質:脂質=60:20:20または55:20:25が推奨される。本患者では蛋白の比率が高く、糖質の比率が低い。
d 肥満はなく(BMI≒21.9)、1日総エネルギーも2,000kcalを切っている。これ以上、減量の必要はない。「仕事内容がデスクワーク」等の情報が示されていないため、標準体重から推奨される摂取エネルギー量を算出させる意図は出題者になかったと思われる。
e 動脈硬化性疾患予防のための食事として、コレステロール摂取量は200mg/日未満に抑えることが推奨されている。ゆえに数値の面だけから議論すると290mg/日というのは確かに制限する余地はある。しかしながら、「血糖値と尿検査の異常とを指摘されたため来院した」患者に対してコレステロール制限は趣旨と異なる。ゆえにcに正答を譲ることとなる。
※eの選択肢は意図的に290という値が設定されていると考えられる(設問文も「最も適切」という誘導になっている)。どの項目に優先順位を与えるか、という臨床評価・判断は近年の国試におけるトピックの1つだ。

正答率:67%

テーマ:1週間分の献立分析から行う食事指導

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