111A58

45歳の男性。スポーツジムで運動中に突然の胸やけと吐き気が出現したため救急車で搬入された。意識は清明。身長170cm、体重70kg。体温36.2℃。心拍数88/分。血圧136/96mmHg。呼吸数18/分。SpO2 99%(鼻カニューラ2L/分酸素投与下)。心音と呼吸音とに異常を認めない。血液所見:白血球7,700。血液生化学所見:AST 75U/L、ALT 50U/L、LD 361U/L(基準176〜353)、尿素窒素17mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、尿酸6.4mg/dL、血糖115mg/dL、Na 135mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 102mEq/L、トロポニンT陰性。心電図(A)と胸部エックス線写真(B)とを別に示す。モニター装着や静脈路確保などの処置を行った。

この患者を専門医に引き継ぐまでの間に、特に注意すべき合併症はどれか。3つ選べ。

洞停止
心室細動
上室性期外収縮
完全房室ブロック
発作性上室性頻拍

解答: a,b,d

111A58の解説

突然の胸やけと吐き気で救急搬送された45歳男性。エックス線(A)では軽度の心拡大をみる。心電図(B)にてII、III、aVF誘導でSTが上昇しており急性心筋梗塞の診断となる。誘導からは下壁(右冠動脈病変)が疑われる。その急性期合併症を選ぶ問題。
a・d 正しい。右冠動脈の閉塞により房室伝導障害(房室ブロック)、洞結節の虚血から洞停止が起こり得る。この場合はまず一時的ペースメーカーを挿入した上での血行再建術となる。
b 正しい。急性心筋梗塞により心室性期外収縮が起こるが、R on T現象により心室細動を認めることがある。決して稀ではないので除細動器をすぐ近くに準備しておき注意深く観察する。
c・e これらも起こり得る合併症ではあるが上室性のものは致死的には至らないため緊急性が低い。
※上室性の不整脈は致死率が高くない。「特に注意すべき合併症」とあるため、cとeを除外するだけでも解答には至るサービス問題のはずなのだが、正答率は70%と高くない。臨床医的視点と机上の学問とが乖離する好例といえる。

正答率:70%

テーマ:急性心筋梗塞〈AMI〉(下壁)の急性期合併症

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