110I75

70歳の女性。労作時の呼吸困難を主訴に来院した。3年前から風邪をひいていなくても咳や喀痰が出るようになり、風邪をひくと咳と痰が悪化し、時に喘鳴が出現するようになった。2年前から坂道や階段を昇る際に呼吸困難を自覚するようになり、3か月前からは、平地でも100m歩くと強い息切れを自覚し途中で休むようになったため受診した。喫煙は69歳まで15本/日を49年間。身長153cm、体重45kg。脈拍88/分、整。血圧140/80mmHg。呼吸数24/分。SpO2 95%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口唇や指尖にチアノーゼを認めない。頸部の胸鎖乳突筋が肥厚し、吸気時に肋間や鎖骨上窩の陥入を認める。胸郭は前後に拡張し、呼気が延長している。胸部の聴診で呼吸音が減弱している。胸部の打診で鼓音を呈する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。心エコーで異常を認めない。胸部エックス線写真で肺の過膨張所見を認める。呼吸機能検査は、FVC 2,500mL、%FVC 104%、FEV1 700mL、%FEV1 36%、FEV1% 28%であった。
この患者の増悪予防のために有用なのはどれか。2つ選べ
酸素療法
インフルエンザワクチン接種
長時間作用性β2刺激薬の吸入
短時間作用性抗コリン薬の吸入
経口ペニシリン系薬の少量長期投与

解答: b,c

110I75の解説

高齢女性の労作時呼吸困難。長期喫煙歴、風邪による悪化、胸鎖乳突筋の肥厚、Hoover徴候、胸郭拡張と肺過膨張、呼気延長、呼吸音減弱と鼓音、といったキーワードが並んでいる。呼吸機能検査でも閉塞性障害がみられており、慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の診断となる。
a 治療としては有効だが、「増悪予防」にはならない。
b 正しい。インフルエンザ感染により急性増悪をきたしかねないため、それを予防する。
c 正しい。気管支拡張作用により増悪予防できる。
d 増悪予防には平常時から使用する薬剤を用いたい。短時間作用性の薬剤は不適切。
e 経口マクロライド系抗菌薬の少量長期投与が有効。

正答率:63%

テーマ:慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉急性増悪の予防

フォーラムへ投稿

関連トピック