解決済 111D21 07.循環器

WPW症候群

本問は“偽性VT”とすんなり診断に至ってしまうものなのでしょうか?
文中には“WPW症候群を指摘”と記されており、発作時の対応を問われているため、“PSVT”もしくは“偽性VT”であることは理解できます。
しかし、記載の心電図を見てみると、パッと見た感じではRR間隔は整に見えてしまい、
「あれ?偽性VTって元はPAFなんだし、RR不整じゃないの?」
「そもそもHR計算したら、187/分?これって先生が言う定義的には頻拍?リズムは整だし…ってことはPSVTか」
「あれ?じゃあWPWからのPSVTの心電図って……?こいつもδ波の影響でwideQRSになるのかな?」
「でもPSVTだとして、答えは…“次に行うべき”だから…bとcか。あれ、答え2つ?」
「(ここで他社の問題集を参照)『よく見るとリズムは不整』。まじか!?これ不整なの!?」
「じゃあ偽性VTか…まぁ“突然意識を失って倒れた”とも書いてあるし、答えもeで落ち着くし」
「いや待てよ、そもそもPSVTでも同じ理屈で、β−blockerもジギタリスも禁忌なんじゃ…?」
といった具合で、迷宮入りしてしまいました。

上記の通り、疑問点がたくさんあるのですが、どなたか解決にご助力頂ければと思います。

回答3件

  • WPW症候群(非発作時)の波形はwide QRSですが、これは房室結節からの興奮と副伝導路からの興奮とが心室で融合するためと言われています。(伝導速度の異なる2つの経路が融合すれば確かにwide QRSになりそうです)。

    ところで、WPW症候群に合併するPSVTは房室回帰頻拍(AVRT)と呼ばれます。
    これは、主に房室結節から心室に順行性に伝わってきた興奮が副伝導路を逆行しリエントリーとなります。
    この場合電気的興奮の経路は1つしかないため、Δ波は消失しますし、narrow QRSとなります。
    RRは整となりますが、頻拍でリズムが整かを見極めるのは難しい場合もあるのでQRS幅で見るのも手だと思います。

    一方、WPW症候群にAfを合併した場合は副伝導路は生きているためΔ波は出現しますし、wide QRSとなります。
    もとはAfなのでRRは不整となります。本問でも丁寧に1つ1つ数えてみるとRR不整であることがわかるはずです。

    次にAVRTを合併したWPW症候群でβ−blockerやジギタリスが禁忌になるか否かですが、答えは「ならない」です。
    Afを合併したWPW症候群になぜ房室伝導抑制効果のある薬剤が禁忌かといえば、それによって副伝導路の伝導が促進されてしまうからです。
    しかし、AVRT合併例の多くは房室結節を順行性に伝わり、副伝導路を逆行するという1通りの伝導路しかないため問題ないと思われます。AVRTはPSVTの1つなので、むしろ迷走神経刺激法やCa拮抗薬、ATPなど房室伝導抑制しリエントリーを止めにいく治療が行われます。

    最後に、不応期の長さの関係上AVRTでは房室結節を順行することが多い(90%程度)ですが、副伝導路を順行し房室結節を逆行する逆行性房室結節回帰頻拍というものもあります。この場合伝導路は1つしかないですがwideQRSとなります。(副伝導路からの興奮は房室結節からのものと比べて伝わりが遅いのでしょうか。申し訳ないですが理由まではわかりませんでした。)すると、本問の偽性VTとの鑑別点がRR間隔が整か否かくらいなので難しいところだと思います。とはいえ、これはレアケースでありこれを考慮に入れて解答するべきなのかはわかりませんし、頭がごちゃごちゃになるので気にしない方がいいかもしれません。

    まとめると、
    WPW症候群の合併症で多いのはAfと(順行性)AVRTである。
    narrow QRSならAVRT(RR整)
    wide QRSならAf(RR不整)

    AVRT合併例の治療は迷走神経刺激法など
    Af合併例で房室伝導抑制の薬は禁忌

    でいかがでしょうか。
    間違っている点などあればご指摘お願いします。

    • 副伝導路での"順行か逆行"かで、それぞれ違った病態、治療になると言うことですね。
      非常にわかりやすいご説明、ありがとうございます。
      それにしても、本問の心電図が"よくみると不整"というのは「そりゃないよ」の一言でした。笑
      というよりは、やはり主訴や波形で判断するのが一番なんだなと、落ち着きました。

      また機会がございましたら、よろしくお願いいたします。

  • よこ0000さん、いつもありがとうございます!

コメントを投稿する

ログインするとコメントを投稿することができます。

  • 問題参照 111D21

    47歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。以前から1か月に2回程度の5分ほど続く動悸を自覚しており、2年前の健康診断でWPW症候群を指摘されていたが、医療機関は受診していなかった。本日20時ごろに突然意識を失って倒れたため、家族が救急車を要請した。脈は微弱(頻脈)。意識レベルはJCS II-30。心拍数172/分。血圧64/48mmHg。呼吸数28/分。SpO2 92%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。顔色は不良である。2年前の心電図(A)と今回の心電図(B)とを別に示す。

    次に行うべき処置はどれか。

    • a α遮断薬投与
    • b β遮断薬投与
    • c ジギタリス投与
    • d カテコラミン投与
    • e カルディオバージョン
  • 関連トピック