update、過去のフォーラムを見させていただき、出生時に10パーセンタイル以上であることから、出生時には-2SD以上であり、SGA性低身長の定義は満たさないことまでは理解できました。
出生時に-2SD以上であったにもかかわらず、生後半年の時点で-2SDを大きく下回っており、生後早期より低身長をきたしているように見えるのですがなぜ内分泌性を疑うのでしょうか?
選択肢同士の見比べで消去法的に残さざるおえない問題なのでしょうか。
Q1.出生時に-2SD以上であったにもかかわらず、生後半年の時点で-2SDを大きく下回っており、生後早期より低身長をきたしているように見えるのですがなぜ内分泌性を疑うのでしょうか?
>>
本症例において内分泌性低身長を疑う大きな理由は、1歳まで伸び率自体に異常がみられなかったにもかかわらずその後に伸び率が大きく低下したことにあります。
質問者さんの言われている通り、
生後早期より低身長をきたしていることだけでは内分泌性低身長を積極的に疑うことはできず、
家族性低身長などの原発性低身長を否定できません。(選択肢にはありませんが。)
ただ、同時に家族性低身長などの原発性低身長を積極的に疑うこともできません。
生後早期より低身長をきたしていても、診断はただ低身長であるというだけです。
そのため、患者さんに低身長が疑われた場合、成長曲線による伸び率の評価を行い疾患の鑑別をする必要があります。
もしも、出生時に-2SD以上であり生後半年の時点で-2SDを大きく下回っていて、伸び率に異常が見られなければ
家族性低身長などの原発性低身長を積極的に疑うこととなります。
Q2.選択肢同士の見比べで消去法的に残さざるおえない問題なのでしょうか。
>>
成長曲線から内分泌性低身長の中でも甲状腺機能低下症(クレチン症を含む)あるいは成長ホルモン分泌不全性低身長症であることがかなり積極的に疑えるので、選択肢の見比べは絶対条件ではありません。
本症例では1歳以降から急な伸び率の低下がみられることから原発性低身長やその他の内分泌性低身長は否定的です。
さらに、クレチン症ではもっと早期からの伸び率低下や精神発達遅滞がみられることが多いことから
成長ホルモン分泌不全性低身長症を強く疑うことができます。
回答ありがとうございます。
出生時体重から生後半年で-2SDを跨いで体重増加が遅れている時点で生後1歳までの伸び率は正常ではないと思うのですがどうなのでしょうか。
グラフでも成長曲線と平均との乖離は生後半年前後で大きく開いているように見受けられます。
むしろ一歳以降の成長曲線は平均と平行なので伸び率で議論するなら大きな異常はないように見受けられるのですがグラフの読み方が間違っているのでしょうか
Q.出生時体重から生後半年で-2SDを跨いで体重増加が遅れている時点で生後1歳までの伸び率は正常ではないと思うのですがどうなのでしょうか。
>>確かに、そもそも生後1歳までの伸び率が正常であるということは難しいと思います。
Q.グラフでも成長曲線と平均との乖離は生後半年前後で大きく開いているように見受けられます。
むしろ一歳以降の成長曲線は平均と平行なので伸び率で議論するなら大きな異常はないように見受けられるのですがグラフの読み方が間違っているのでしょうか
>>100H6が典型的な成長ホルモン分泌不全性低身長症の成長曲線ですね。
それと比べるならば、確かに身長の量としての変化率だけでいうならば大きな異常がないように見えます。
ただ、100H6と異なるのはもともとの子どもが小さく生まれてしまっているので、
成長ホルモン分泌不全性低身長症であった場合に、身長の変化量の低下が隠れてしまう可能性です。
都合よく見れば、
1歳までは‐2SD(実線)に向かうように身長が増加していくのに対して
1歳からは微妙な伸び方になり、
2歳以降は‐2.5SD(点線)から-3.0SD(点線)に動くような身長の増加をしているように見えなくもありません。
ただ、ここから先の年齢で‐2SD以上への身長の増加が強く見込めないという点で、1歳までの伸び率に比べて1歳以降の伸び率は少なくとも正常ではないということができると思います。
そのため、成長ホルモン分泌不全性低身長症などの内分泌性低身長は治療が可能という点からも疑って検査したほうがいいということになると思います。
ただ、これは成長曲線を見たうえでの話であり、成長ホルモン分泌不全性低身長症を疑うきっかけではありますが、
強く他の疾患を否定するものではないと思います。
身長・体重の伸び率について補足させていただきます。
SGA児では一般の成長速度に比べて、急激な成長現象(growth catch up)が見られます。
SGA児の場合、身長 and/or 体重が出生時に在胎週数相当の-2.0 SD以下です。
その後、1年以内におこるgrowth catch upによって90%程度が2年以内に-2.0 SD以上、つまり正常の範囲内まで成長し、2歳以内でcatch upは終了するのが多いです。本症例では生後半年〜1年の伸び率がgrowth catch upに当たると考えられます。
SGA児や早産による低出生体重児の場合はこの減少があるために、健常児における平均体重を使って(-2.0SDとか-1.0SDとか)単純に評価することができないので、Dr. 爽健美茶がおっしゃっているように、成長曲線の伸び率で評価する必要がある訳です。
通常の成長曲線のパターンでよくある、「途中から成長曲線の正常範囲を逸脱している!=内分泌性だ!」みたいに考えると、この場合間違えます。判断が難しいですね。
さてそもそも、なぜ「SGA性低身長症」という病名がわざわざつけているかというと、このgrowth catch upが十分でない児を2才時点(ある程度growth catch upが進んでいるはずの状態)で拾い上げて、早めに成長ホルモン補充療法などにつなげるためです。
高齢妊娠などにより低出生体重児の出生割合自体増えていることからも、「低出生体重児でも内分泌疾患を見逃さないでね!」という厚労省のメッセージ的なものを個人的には感じます。
過去のフォーラムで穂澄先生が添付している資料ですが、SGA性低身長についてわかりやすく書いてあると思うので、腑に落ちないようでしたら一度ご覧になってみてください。
「SGA 性低身長症における GH 治療のガイドライン」:http://jspe.umin.jp/medical/files/guide11104641.pdf
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3歳1か月の男児。3歳児健康診査で低身長を指摘され両親に連れられて受診した。在胎35週3日、母体妊娠高血圧症候群のため緊急帝王切開で出生した。出生体重2,160g(>10パーセンタイル)、身長44.0cm(>10パーセンタイル)。早産と低出生体重児のため2週間NICUに入院した。NICU入院後2日間は哺乳不良を認めた。1歳6か月児健康診査で歩行可能であり、「ママ」などの有意語は数語認められた。低身長、低体重のため6か月ごとの受診を指示されていたが受診していなかった。偏食はなく保育園で他の同年齢の子どもと比較して食事量は変わらない。自分の年齢、氏名を答えることができる。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。外性器異常は認めない。父の身長は175cm、母の身長は160cm。患児の成長曲線を別に示す。
可能性が高い疾患はどれか。