117D56

46歳の女性。血痰を主訴に来院した。約2年前から咳嗽と喀痰を自覚していた。徐々に喀痰が増え、2日前から血痰が出現したため受診した。身長160cm、体重44kg。体温37.0℃。脈拍80/分、整。血圧124/72mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(room air)。右前胸部にrhonchiを聴取する。喀痰検査でZiehl-Neelsen染色が陽性であったが、結核菌PCR検査は陰性であった。血液検査で抗MAC〈Mycobacterium avium complex〉抗体が陽性であった。胸部単純CTを別に示す。
この患者で正しいのはどれか。
抗菌薬単剤治療を避ける。
治療は6か月間が基本である。
ヒトヘ感染させる可能性がある。
菌が検出されたら直ちに治療を開始する。
土壌や水系などの自然環境には存在しない菌による。

解答: a

117D56の解説

【プロセス】
①約2年前から咳嗽と喀痰
②喀痰が増え、2日前から血痰が出現
③右前胸部にrhonchiを聴取
④喀痰検査でZiehl-Neelsen染色が陽性
⑤結核菌PCR検査は陰性
⑥血液検査で抗MAC〈Mycobacterium avium complex〉抗体が陽性
⑦胸部単純CTにて右中葉の小粒状影
☞①②より長期に及ぶ進行性の呼吸器疾患を考える。③より病変は右肺にあることが予想される。④⑤のgapからは非結核性抗酸菌症を考えるが、⑥で親切にも肺MAC症であることを示してくれている。⑦の画像も典型例である。

【選択肢考察】
a 正しい。多剤併用が推奨されており、抗菌薬単剤治療は回避する。
b 6か月間の治療が基本となるのは肺結核。非結核性抗酸菌症では1年程度の投薬が行われる。
c 肺結核と異なり、非結核性抗酸菌症はヒト-ヒト感染しない。
d ヒト-ヒト感染しない病原体であるため、菌が検出されても症状に乏しいような例では経過観察となることがある。本症例では血痰を主訴に来院しており、果たして「症状に乏しい」と言えるかは疑問であるが、肺結核と異なり非結核性抗酸菌症では「直ちに」と表現するほど緊急性がないことを押さえよう。少なくとも他により適切な選択肢がある以上、正解とはしない。
e 115D33で「水族館で飼育員として勤務していて感染」といった過去問が出ていることからも分かるように、自然環境に存在する菌である。

正答率:66%

テーマ:非結核性抗酸菌症について

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