117D39

48歳の女性。倦怠感と痒みを主訴に来院した。1週間前から倦怠感があり、3日前から全身の痒みを自覚し受診した。心窩部不快感、下痢および便秘はない。健康維持のため1年前からサプリメントを摂取していた。内服薬はない。飲酒は機会飲酒。海外渡航歴はない。生貝や生肉の摂食歴はない。意識は清明。身長158cm、体重62kg。体温36.3℃。脈拍72/分、整。血圧116/70mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に軽度黄染を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球490万、Hb 14.5g/dL、Ht 42%、白血球6,300(好中球56%、好酸球12%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球25%、異型リンパ球0%)、血小板29万、PT-INR 1.1(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白7.4g/dL、アルブミン4.1g/dL、IgG 1,210mg/dL(基準960~1,960)、総ビリルビン5.1mg/dL、直接ビリルビン3.8mg/dL、AST 770U/L、ALT 620U/L、ALP 426U/L(基準38~113)、γ-GT 487U/L(基準8~50)、血糖96mg/dL。免疫血清学所見:IgM型HA抗体陰性、HBs抗原陰性、IgM型HBc抗体陰性、HCV抗体陰性、HCV-RNA陰性、抗核抗体陰性、抗ミトコンドリア抗体陰性。腹部超音波検査で異常を認めない。
診断確定に有用な検査はどれか。
ICG試験
尿素呼気試験
薬剤リンパ球刺激試験
α1-アンチトリプシン法
経口グルコース負荷試験〈75gOGTT〉

解答: c

117D39の解説

【プロセス】
①1週間前から倦怠感
②3日前から全身の痒み
③心窩部不快感、下痢および便秘はない
④健康維持のため1年前からサプリメントを摂取
④飲酒は機会飲酒
⑤海外渡航歴はない
⑥生貝や生肉の摂食歴はない
⑦眼球結膜に軽度黄染を認める
⑧好酸球12%・異型リンパ球0%
⑨IgG基準値内
⑩直接ビリルビン↑・AST↑・ALT↑・ALP↑・γ-GT↑
⑪ 免疫血清学所見はすべて陰性
⑫腹部超音波検査で異常を認めない
☞⑦⑩より肝胆周辺の病態により①②がみられていると推測できる。⑧の好酸球上昇からはアレルギー反応が予想される。異型リンパ球ときたら伝染性単核球症〈IM〉を想起する者が多いはずだが、実はサイトメガロウイルス肝炎やウイルス性肝炎でも上昇する。ゆえにここではこうした疾患を総じて除外させたいのであろう。同様に③から消化管疾患、④からアルコール性肝炎、⑤から輸入感染症、⑥からA/E型肝炎、⑨より自己免疫性肝炎〈AIH〉、⑪よりウイルス性肝炎やAIH・原発性胆汁性胆管炎〈PBC〉などが否定される。⑫は胆石による閉塞性黄疸など明らかな器質的病態が除外される。ゆえに残る可能性は④と言えよう。薬剤性の肝障害である。

【選択肢考察】
a ICG試験により肝機能を調べることができるが、その結果によって何かしらの疾患が確定されるわけではない。
b ピロリ菌の検査である。
c 正しい。冒頭④⑧で延べたように、薬剤によるアレルギー反応が原因として最も考えやすい。実際に被疑薬を添加する薬剤リンパ球刺激試験が確定診断に有用だ。
d 蛋白漏出性胃腸症の検査である。
e 糖尿病の検査である。本患者の血糖は96mg/dLであり、耐糖能異常がある可能性は低い。なお、75gOGTTは折しも同ブロック、117D27-dで先端巨大症の検査としても出題があるので、確認を。

正答率:64%

テーマ:薬剤性肝炎の診断に有用な検査

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