116D33

2か月の女児。突然の意識障害のため救急車で搬入された。在胎40週、出生体重3,300gで出生した。出生後から母乳栄養で哺乳状態は良好であった。午後の哺乳が不良であったが、そのまま寝ていた。哺乳させようと抱いたところ、けいれんが起こり、ぐったりしたため母親が救急車を要請した。身長56cm、体重4.8kg。体温36.8℃。心拍数160/分、整。血圧90/52mmHg。呼吸数36/分。SpO2 98%(マスク5L/分 酸素投与下)。大泉門は膨隆している。対光反射は両側で遅延している。右肋骨弓下に肝を6cm触知する。血液所見:赤血球450万、Hb 9.5g/dL、Ht 36%、白血球10,800、血小板25万、PT-INR 4.2(基準0.9~1.1)、APTT 45.4秒(基準対照32.2)、血液生化学所見:総蛋白5.4g/dL、アルブミン3.3g/dL、総ビリルビン11.0mg/dL、直接ビリルビン6.8mg/dL、AST 130U/L、ALT 74U/L、ALP 203U/L(基準114~339U/L)、γ-GT 410U/L(基準8~50U/L)、血糖90mg/dL。CRP 0.1mg/dL。頭部CTを別に示す。

直ちに行うべき処置はどれか。

鉄剤静注
ビタミンK内服
生理食塩液点滴
新鮮凍結血漿投与
開頭による血腫除去

解答: d

116D33の解説

【プロセス】
①けいれんが起こり、ぐったり
②出生後から母乳栄養
③大泉門は膨隆
④対光反射は両側で遅延
⑤右肋骨弓下に肝を6cm触知
⑥PT-INR・APTTともに延長
⑦直接ビリルビン高値
⑧AST・ALT高値
⑨頭部CTにて頭蓋内出血
☞③④より脳内のトラブルを疑うが、⑨より頭蓋内出血と分かる。これにより①がみられているのだろう。生後2か月の女児であれば肝は数cm触れても問題ない。しかし、⑤の6cmは触れ過ぎだ。⑧と合わせ、何かしらの肝障害を考えるが⑥⑦がそのヒントとなる。胆道閉鎖症により閉塞性黄疸(⑦)を呈し、脂肪吸収が低下、②と相まってビタミンK欠乏症を呈したのだろう。これにより⑥も説明がつく。

【選択肢考察】
a 鉄欠乏性貧血に有効。
b 本選択肢を選んだ受験生が約35%。気持ちは分かる。が、意識障害がある今、そもそも内服は困難だ。また、脂肪吸収不良が原因となっているため、経口接種しても吸収されにくい可能性が高い。投与経路としては静注にすべき。
c 血圧低下もみられておらず、必要ない。
d 正しい。止血のため凝固因子(特にビタミンK依存性の第II, VII, IX, X因子)を補充する。
e 易出血性の状態でopeは難しい。開頭が必要と考えられるケースでも、まずは出血傾向のコントロールが優先される。

正答率:34%

テーマ:乳児ビタミンK欠乏症に直ちに行うべき処置

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