116A63

78歳の女性。1週間前から38℃台の発熱が持続し、全身倦怠感のため来院した。身長151cm、体重42kg。体温38.2℃。脈拍92/分、整。血圧84/50mmHg。胸腹部に異常所見を認めない。皮膚の乾燥や四肢に浮腫を認めない。血液生化学所見:尿素窒素24mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、空腹時血糖65mg/dL、Na 129mEq/L、K 5.1mEq/L、抗利尿ホルモン1.4pg/mL(基準0.5~2.0)。随時尿での尿中Naは16mEq/Lであった。

この患者で認められる所見はどれか。

低尿酸血症
低レニン血症
尿浸透圧低下
甲状腺機能低下症
低コルチゾール血症

解答: e

116A63の解説

【プロセス】
①1週間前から発熱と全身倦怠感
②血圧低下(84/50mmHg)
③空腹時血糖低下(65mg/dL)
④低Na高K血症
⑤尿中Na16mEq/L
☞④からはアルドステロン作用の低下が読み取れる。②は低Na血症によるところが大きいのだろう。また、③はコルチゾール低下によると考えられる。副腎皮質ホルモンが2系統低下しているため、Addison病(副腎皮質機能低下症)と判断する。なお、⑤より尿中にNaはそれほど捨てられておらず、ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉は否定的(SIADHであれば尿中Naは20mEq/L以上であるべき)。

【選択肢考察】
a SIADHにてみられる。
b アルドステロン低下によるネガティブフィードバックにより、レニンは上昇する。
c コルチゾール作用には水利尿作用がある。本疾患ではコルチゾール作用が低下するため、水利尿の逆、すなわち水の排泄が滞る。そのため、尿は一定レベルまで濃くすることができる。とはいえ、冒頭に示したようにSIADHほど尿が濃くなっているわけではない。基準範囲内の尿浸透圧と考えられる。
d Addison病と慢性甲状腺炎〈橋本病〉が合併した場合、Schmidt症候群と呼ばれる。ゆえに、あくまで一般論としては甲状腺機能低下症も合併する可能性はあるのだが、この患者においては徐脈もみられておらず否定的。
e 正しい。副腎皮質由来のコルチゾール分泌が低下する。

正答率:64%

テーマ:Addison病(副腎皮質機能低下症)の所見

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