116A25

13歳の女子。バスケットボールの試合中に気分不快と腹痛が出現したため、教師に付き添われ来院した。会場で用意された弁当を食べて約1時間後に試合に出場した。試合開始10分後に気分不快と全身の皮膚掻痒及び強い腹痛が現れた。弁当の主な副食材はイカであり、最近1年ほどは食べていなかったという。診察時には気分不快や腹痛のピークは過ぎていた。意識は清明。体温36.8℃。脈拍80/分。呼吸数18/分。SpO2 100%(room air)。血圧110/76mmHg。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、軽度の紅斑と膨疹を認める。血液所見:赤血球430万、Hb 12.5g/dL、白血球4,800(分葉核好中球42%、好酸球2%、リンパ球56%)、血小板21万。CRP 0.3mg/dL。

今後の対応として適切なのはどれか。

部活動を止めさせる。
イカの摂取を禁ずる。
プリックテストを行う。
運動前の食事は禁止する。
運動前にステロイド薬を内服させる。

解答: c

116A25の解説

【プロセス】
①バスケットボールの試合中に気分不快と腹痛
②会場で用意された弁当を食べて約1時間後に試合に出場
③弁当の主な副食材はイカであり、最近1年ほどは食べていなかった
④軽度の紅斑と膨疹を認める
☞①②③よりイカ摂取後の運動が原因となった可能性が高い。④からはアナフィラキシー症状が読み取れる。食物依存性運動誘発アナフィラキシーが考えられる。

【選択肢考察】
a 原因物質摂食後の運動を控えればよく、部活動を止めさせるのはやりすぎ。
b 確かにイカが原因の可能性が高い。が、現時点ではまだ確定ではない。禁止を指導するにしても、各種検査で担保をとってからだろう。
c 正しい。I型アレルギーの原因同定に適した検査である。
d 107A40にて「食直後の運動は避ける」が正解選択肢として出題されている。数学的に考えてしまうと、たしかに「食直後の運動は避ける」と「運動前の食事は禁止」はほぼ同義であり、この選択肢を選んでしまった受験生が約20%いた。各所でコメントしているが、医学を数学と同等に考えると痛い目に遭うことが多い。我々医師が向き合っているのは数式ではなく、生きた人間なのだ。数学の証明におけるような完璧なゴールを期待できることはむしろ少なく、手探り状態のなかで最善をつくす姿勢が必要となる。たとえば今回の場合、「運動前の食事は禁止」した場合、空腹状態で運動をすることとなり、低血糖など他の問題も発生しうる。またそもそも、現時点では食物依存性運動誘発アナフィラキシーの確定診断に至ったわけではない。具体的な各種指導の前にまずはアレルゲン検索など事実関係の確認が優先されるはずだ。
e 食物依存性運動誘発アナフィラキシーに対する副腎皮質ステロイド事前内服の有効性は示されていない。

正答率:71%

テーマ:食物依存性運動誘発アナフィラキシーへの対応

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