116A21

73歳の男性。総胆管結石の加療目的で内視鏡的結石除去術を施行した。3時間後から持続性の心窩部痛と背部痛を訴えた。体温35.8℃。脈拍104/分、整。血圧84/56mmHg。呼吸数20/分。SpO2 93%(room air)。顔面は蒼白である。腹部は平坦で、心窩部に圧痛と筋性防御を認める。血液所見:赤血球430万、Hb 15.3g/dL、Ht 44%、白血球11,000、血小板23万、PT-INR 1.0(基準0.9~1.1)。血液生化学所見:総ビリルビン1.2mg/dL、AST 20U/L、ALT 19U/L、LD 151U/L(基準120~245)、ALP 110U/L(基準38~113)、γ-GT 22U/L(基準8~50)、アミラーゼ1,495U/L(基準37~160)、クレアチニン1.0mg/dL。CRP 1.0mg/dL。腹部造影CTを別に示す。

初期治療として、輸液に加えて行うべき治療で適切なのはどれか。

血漿交換
緊急開腹手術
膵酵素阻害薬投与
ステロイドパルス療法
内視鏡的胆道ドレナージ術

解答: c

116A21の解説

【プロセス】
①総胆管結石の加療目的で内視鏡的結石除去術
②3時間後から持続性の心窩部痛と背部痛
③心窩部に圧痛と筋性防御
④アミラーゼ高度上昇
⑤腹部造影CTにて膵実質の造影不領域、炎症波及によると思われる膵周囲の液体貯留
☞①②より内視鏡的結石除去術の合併症を考える。③④⑤より医原性急性膵炎の診断。
※急性膵炎の治療については近年考え方が大きく変わっている(こちらのトピック参照)。116回と過去の出題であるため、現代では参考程度にとらえてほしい。

【選択肢考察】
a 重症例では血液透析や血漿交換を行うこともある。が、初期治療として輸液に加えて行う対応ではない。
b 重症例では手術適応となる例もある。が、初期治療として輸液に加えて行う対応ではない。
c △。膵酵素による臓器障害を防止するため、初期治療として投与されていたが、現代では「推奨なし」という扱いになっている。
d 自己免疫性膵炎に対して行われることがある。
e 総胆管結石が原因となった急性膵炎で黄疸を合併している例では行われることがある。本患者では総ビリルビン1.2mg/dLと高度上昇はみられておらず、ドレナージの必要性は低い。

正答率:95%

テーマ:急性膵炎の初期治療

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