115D57

63歳の女性。倦怠感を主訴に、夫とともに来院した。夫からみると「以前と比べて、ぼーっとしている」とのことであった。36歳と57歳でうつ病と診断されている。2回とも抗うつ薬を服用し、6か月程度で回復し、1年ほど服薬を続けた。その後は抑うつ感を認めていない。うつ病の時期を除いて仕事は順調で、職場では事務能力を高く評価されていた。仕事は順調であったが、3か月前、自分に合わない上司にかわったことを嘆いていた。2か月前から「体がだるい。疲れやすい。頭痛がする」と訴えたため、自宅近くの診療所を受診し、抗不安薬と睡眠薬を処方された。薬物を増量しながら仕事を続けていたが、1か月前から仕事のはかどりが著しく悪くなり、周囲からみてもぼーっとしている時間が長くなった。3週前から仕事に行っても仕事にならないため自宅で休養しているという。本日受診時、ぼーっとした表情であり、少し暗い感じであった。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは9点(30点満点)で、回答には非常に時間がかかった。

この時点で最も可能性の低い疾患はどれか。

うつ病
慢性硬膜下血腫
甲状腺機能低下症
Alzheimer型認知症
精神作用物質使用による精神および行動の障害

解答: d

115D57の解説

【プロセス】
①中高年女性
②倦怠感
③以前と比べぼーっとしている
④うつ病と診断されたことあり
⑤3か月前に自分に合わない上司にかわったことを嘆いていた
⑥易疲労感
⑦頭痛
⑧自宅近くの診療所で抗不安薬と睡眠薬を処方された
⑨薬物を増量しながら仕事を続けていた
⑩改訂長谷川式簡易知能評価スケール9点
設問誘導にあるように、これだけで確定診断をつけることは困難。考えうる疾患を1つ1つ吟味していこう。

【選択肢考察】
a ②~⑤から十分に考えられる。
b ①⑦より考えうる。が、「転倒して頭をぶつけた」のような外傷歴についての記載もなく、これだけの情報から慢性硬膜下血腫を考えさせるのは国試の問題としては酷。事実半数以上の受験生がこの選択肢を選び、撃沈してしまった。「外傷エピソードに乏しい慢性硬膜下血腫もあるから臨床の現場では気をつけてね!」という出題者のメッセージなのだろうが、ありがた迷惑な感が否めない。
c ②③⑥⑩より考えうる。
d 誤り。確かに⑩より認知機能低下があるとは言える。が、Alzheimer型認知症がたった3か月でここまで進行することはありえない。
e ⑧⑨より考えうる。

正答率:32%

テーマ:「ぼーっとしている」患者の鑑別診断

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