115D32

78歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。約1か月前から全身倦怠感があり増悪するため受診した。意識は清明。脈拍88/分、整。血圧130/84mmHg。眼瞼結膜は貧血様であるが眼球結膜に黄染を認めない。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球185万、Hb 6.5g/dL、Ht 21%、白血球2,600(骨髄芽球0%、桿状核好中球3%、分葉核好中球50%、好酸球1%、好塩基球1%、単球2%、リンパ球43%)、血小板9.2万。血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL、アルブミン3.4g/dL、総ビリルビン0.7mg/dL、AST 21U/L、ALT 11U/L、LD 240U/L(基準120〜245)、尿素窒素17 mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、尿酸5.2mg/dL、血清鉄120μg/dL(基準80〜170)、TIBC 280μg/dL(基準290〜390)、フェリチン120ng/mL(基準20〜120)、エリスロポエチン180mIU/mL(基準4.2〜23.7)。骨髄は正形成で骨髄塗抹標本では3系統の造血細胞に異形成を高頻度に認めた。骨髄細胞の染色体は正常核型であった。

この患者への対応で適切なのはどれか。

赤血球輸血
鉄キレート剤の投与
同種造血幹細胞移植
副腎皮質ステロイドの投与
トロンボポエチン受容体作動薬の投与

解答: a

115D32の解説

【プロセス】
①78歳男性
②汎血球減少
③骨髄芽球0%
④骨髄では3系統の造血細胞に高頻度な異形成
⑤骨髄細胞の染色体は正常核型
④で「異形成」と書いてしまっているところに優しさを感じる。骨髄異形成症候群〈MDS〉である。予後スコアリングシステムであるIPSSを用いてリスク評価をしたいところだが、②⑤のほか、「骨髄中の芽球割合」が情報として必要。本問ではその記載がなく、評価不能(③からは5%未満の可能性も高く、高リスクとは考えにくい)。「骨髄中の芽球割合」の記載がない理由としては「IPSSなんて真面目に覚える必要はないよ、何となくで消去法で点を取ってね!」という出題者のおおらかさを感じる(単に記載を忘れただけかもしれないが)。

【選択肢考察】
a 正しい。主訴である全身倦怠感の理由は貧血にある可能性が高く、赤血球輸血が望ましい。
b ヘモクロマトーシスの治療。今、鉄やフェリチンが高度上昇していることはないため、必要ない。
c 78歳と高齢であり、適応とならない。
d 単剤でMDSの第一選択治療薬として用いることはない。
e 再生不良性貧血〈AA〉に対して有効。

正答率:68%

テーマ:骨髄異形成症候群〈MDS〉への対応

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