115D22

75歳の女性。左変形性膝関節症に対して、人工膝関節全置換術を受けた。翌朝、夜勤看護師から発熱していると報告された。意識は清明。体温37.4℃。脈拍92/分、整。血圧96/50mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(room air)。血液所見:赤血球360万、Hb 10.1g/dL、Ht 34%、白血球9,800(桿状核好中球5%、分葉核好中球60%、好酸球3%、好塩基球2%、単球3%、リンパ球27%)、血小板20万。血液生化学所見:総蛋白8.0g/dL、アルブミン3.4g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、直接ビリルビン0.3mg/dL、AST 37U/L、ALT 18U/L、LD 208U/L(基準120~245)、ALP 320U/L(基準115~359)、γ-GT 9U/L(基準8~50)、CK 350U/L(基準30~140)、尿素窒素28mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖120mg/dL。CRP 8.7mg/dL。創部に異常を認めない。

今後の対応として適切でないのはどれか。

離床
クーリング
解熱剤投与
広域抗菌薬投与
リハビリテーション開始

解答: d

115D22の解説

【プロセス】
①人工膝関節全置換術後
②手術翌朝の発熱(37.4℃)
③白血球数・CRP上昇
④CK上昇
⑤血中尿素窒素/クレアチニン≒31.1(☞脱水疑い)
⑥創部に異常を認めない
②③をみると、手術後の細菌感染を考えたくなる。しかし、⑥から否定的。手術侵襲に対する生理的反応の一環として発熱がみられたものと考えるのが妥当であろう。CK上昇の理由は手術中の侵襲または術中〜術後の体位による筋圧迫が原因とし考えやすい(決して急性心筋梗塞〈AMI〉などを考えさせるものではない)。

【選択肢考察】
a 廃用症候群の予防のためにも、早期離床が望まれる。
b 発熱患者に対して、まず行われることが多い。
c 高齢者であり、腎機能を考慮してか、なぜかこの選択肢を「適切でないもの」として選んだ受験生が多かった。が、NSAIDのように具体的に薬物名が示されているならまだしも、「解熱剤」としか書いておらず、またクレアチニンの高度上昇もないことから、出題者の意図するところではないと察したい。
d 誤り。CRP上昇もあり、細菌感染と考えてしまう気持ちはわかる。そう考えるとこの選択肢は「適切」という判断にせざるを得ない。が、本患者に細菌感染は無い可能性が高い。すなわち、現段階での広域抗菌薬投与は不必要なのだ。
e 廃用症候群の予防のためにも、早期リハビリテーション開始が望まれる。

正答率:54%

テーマ:非感染性の術後発熱への対応

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