114A66

48歳の女性。全身倦怠感を主訴に来院した。20年前からほぼ毎日、日本酒5合を飲酒している。6か月前に急性胃腸炎で入院した際にけいれんが生じたという。1週前から食欲不振、倦怠感と腹部膨満感が出現したため救急外来を受診し、入院した。意識レベルはJCS I-3。身長158cm、体重59kg。体温37.4℃。脈拍108/分、整。血圧122/78mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨隆し波動を認める。全身に発汗を認める。血液所見:赤血球247万、Hb 9.6g/dL、Ht 28%、白血球15,000、血小板5万、PT-INR 2.1(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL、アルブミン2.6g/dL、総ビリルビン6.1mg/dL、直接ビリルビン3.4mg/dL、AST 136U/L、ALT 45U/L、LD 362U/L(基準120〜245)、ALP 384U/L(基準115〜359)、γ-GT 223U/L(基準8〜50)、アミラーゼ68U/L(基準37〜160)、クレアチニン1.6mg/dL。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。

対応として適切なのはどれか。2つ選べ

血小板輸血
ビタミンB群投与
ガンマグロブリン投与
内視鏡的胆道ドレナージ
ベンゾジアゼピン系薬投与

解答: b,e

114A66の解説

20年前からほぼ毎日、日本酒5合を飲酒している中年女性。アルコール依存症と考えられる。入院に際し、アルコール離脱症状が出現する可能性を考慮せねばならない。6か月前のエピソードもアルコール離脱症状と考えられ、今回の入院エピソードでも発来するリスクは高い。
a 血小板数はたしかに5万と低下しているも、出血傾向がみられているわけではないため不要。
b 正しい。アルコール大量摂取者ではビタミンB1をはじめとする、ビタミンB群が欠乏していることが多い。Wernicke脳症のリスクともなるため、補いたい。
c 肝硬変で血中ガンマグロブリンが上昇することはあるが、一般に肝硬変またはアルコール依存症・離脱症状にガンマグロブリン投与することはない。
d 急性閉塞性化膿性胆管炎〈AOSC〉などに有効な対応である。本患者では確かに血中直接ビリルビンやALP、γ-GTの上昇があるが、これらはアルコール性肝硬変で説明がつく。特に胆道ドレナージをせねばならない病態はきたしていない。
e 正しい。アルコール離脱症状に対する第一選択薬である。本患者のようにリスクの高い場合には予防投与されることもある。

正答率:57%

テーマ:アルコール依存症患者が入院した際の対応

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