113F62

72歳の男性。腰背部痛を主訴に来院した。3年前に多発性骨髄腫と診断され、3種類の異なる抗癌化学療法を施行されてきたが、現在まで一度も寛解に至っていない。2か月前から腰痛、背部痛および肋骨痛が出現しNSAIDsが投与されたが、疼痛は増悪しており、最近は疼痛のため室内移動も困難であり1日中ベッドに横になっていることが多い。数日前から症状が増悪し、食欲低下および嘔吐をきたすようになった。意識は清明。身長172cm、体重54kg。体温37.2℃。脈拍84/分、整。血圧102/68mmHg。パフォーマンスステイタス〈PS〉4。眼瞼結膜は貧血様である。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を聴取する。四肢に皮下出血を認めない。血液所見:赤血球277万、Hb 6.1g/dL、Ht 26%、白血球3,300、血小板4万。血液生化学所見:総蛋白11.5g/dL、アルブミン2.9g/dL、IgG 8,450mg/dL(基準960~1,960)、IgA 26mg/dL(基準110~410)、IgM 18mg/dL(基準65~350)、総ビリルビン0.6mg/dL、AST 23U/L、ALT 17U/L、LD 325U/L(基準176~353)、ALP 420U/L(基準115~359)、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン1.8mg/dL、尿酸9.2mg/dL、Na 145mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 101mEq/L、Ca 14.0mg/dL。全身の骨エックス線写真で両側大腿骨に広範な骨融解像と第4、第5腰椎に圧迫骨折を認める。

現時点で考慮すべき治療はどれか。

血小板輸血
自家末梢血幹細胞移植
アルブミン製剤の投与
ビスホスホネート製剤の投与
自立歩行を目的としたリハビリテーション

解答: d

113F62の解説

72歳男性の腰背部痛。多発性骨髄腫〈MM〉の診断はすでになされている。選択肢ベースで本文と対応させ、必要な治療を残すアプローチが要求される問題。
a 血小板数は4万と低下しているが、現時点で出血傾向はみられておらず、急ぎ輸血が必要な状況ではない。
b 自家末梢血幹細胞移植の適応は65歳未満。
c アルブミン2.9g/dLと低下しているが、これによる浮腫や胸腹水がみられておらず、急ぎ補充が必要な状況ではない。
d 正しい。両側大腿骨に広範な骨融解像と第4、第5腰椎に圧迫骨折を認めており、Caも14.0mg/dL(補正後15.1)と高度上昇している。骨吸収抑制薬であるビスホスホネート製剤の投与が現時点で最も必要な治療だ。
e 両側大腿骨に広範な骨融解像と第4、第5腰椎に圧迫骨折を認めており、自立歩行を目的としたリハビリテーションで骨折しかねない。そのため現時点で行うべきことではない。

正答率:96%

テーマ:多発性骨髄腫〈MM〉の腰背部痛緩和に考慮すべき治療

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