113A51

56歳の女性。頭痛と発熱を主訴に来院した。2週間前に山菜採りに行き、その数日後から右耳介後部に水疱が出現した。4日前から頭痛と発熱が出現し、3日前に自宅近くの診療所を受診しセフェム系抗菌薬を処方されたが症状は改善しなかった。昨日から全身に発疹が出現した。既往歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。海外渡航歴はなく、ペット飼育歴もない。意識は清明。体温40.1℃。脈拍108/分、整。血圧150/82mmHg。呼吸数24/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜に異常を認めない。眼球結膜に充血を認める。口腔内粘膜に異常を認めない。頸部にリンパ節腫大を認めない。項部硬直を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。体幹部に赤色の小丘疹が散在しているが、癒合傾向を認めない。右耳介後面下部の写真を別に示す。血液所見:赤血球497万、Hb 14.8g/dL、Ht 46%、白血球2,400(分葉核好中球75%、好酸球0%、好塩基球1%、単球3%、リンパ球21%、異型リンパ球0%)、血小板11万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン1.6mg/dL、AST 500U/L、ALT 275U/L、LD 881U/L(基準176~353)、ALP 1,477U/L(基準115~359)、γ-GTP 326U/L(基準8~50)、アミラーゼ73U/L(基準37~160)、CK 86U/L(基準30~140)、尿素窒素10mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL。CRP 5.3mg/dL。

最も考えられる疾患はどれか。

デング熱
マラリア
ツツガ虫病
伝染性単核球症
レプトスピラ感染症

解答: c

113A51の解説

頭痛と発熱を主訴に来院した56歳女性。耳介後部には黒色部を伴う紅斑を認め、これが刺し口である。2週間前に山に行き、その数日後から高熱と発疹を認めている。セフェム系抗菌薬が無効であることもあわせてつつが虫病を考える。白血球の減少と好酸球の消失、肝酵素の上昇も合致している。
a デング熱はヒトスジシマカにより媒介され、潜伏期は2〜15日で、多くは1週間前後での発症となる。高熱や癒合傾向のない発疹を認める点ではつつが虫病と似ており迷うかもしれないが、蚊による媒介では刺し口は認めないため否定できる。
b マラリアはハマダラカによって媒介されるため刺し口は認めない。また、血小板減少やLDH上昇を認めるも、好酸球の消失は認めない。また、国内発症の報告はなく、海外渡航歴もないことから否定できる。
c 正しい。上記の通り。直ちにテトラサイクリン系抗菌薬で治療を開始する。
d 伝染性単核球症では異型リンパ球や肝脾腫を認めるため否定できる。
e レプトスピラ感染症は重症化すると発熱の他に黄疸や腎障害、出血傾向を認めることが多い。

正答率:88%

テーマ:ツツガムシ病〈つつが虫病〉〈ツツガ虫病〉の診断

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