113A52

74歳の男性。息苦しさを主訴に来院した。半年前から階段昇降時などに息切れを自覚していた。2日前から症状が増悪し、昨夜からは安静時にも息苦しさを自覚するようになったため来院した。体温36.4℃。脈拍112/分、整。血圧152/82mmHg。呼吸数20/分。SpO2 95%(room air)。両下胸部にcoarse cracklesを聴取する。胸部エックス線写真(A)を別に示す。心電図は洞性頻脈でST-T変化を認めない。心エコー図(B、C)を別に示す。

本症例に関する研修医と指導医の会話を示す。

 研修医:「心不全の患者さんが来院しました」

 指導医:「先ほど私もお会いしました。心音はどうですか」

 研修医:「(ア)を呈していました。」

 指導医:「心雑音はどうですか」

 研修医:「Levine III/VIの(イ)収縮期雑音を聴取しました」

 指導医:「体位や呼吸で心雑音の強度は変化しますか」

 研修医:「(ウ)」

 指導医:「頸静脈の所見はどうですか」

 研修医:「上体の45度の挙上で胸骨角から10cmの高さまで頸静脈拍動を認めます。推定の中心静脈圧は(エ)程度だと思います」

 指導医:「触診所見はどうでしょうか」

 研修医:「心尖拍動は(オ)で触知されました」

ア~オと会話内容の組合せで正しいのはどれか。

ア --------- 奔馬調律
イ --------- 頸部に放散する
ウ --------- 座位の前傾姿勢で雑音が増強します
エ --------- 5cmH2O
オ --------- 鎖骨中線の内側

解答: a

113A52の解説

息苦しさを主訴に来院した74歳の男性。半年前から労作時呼吸困難を認め、昨夜からは安静時にも症状が出現している。脈拍と呼吸数の増加、SpO2の低下を認め、coarse cracklesを聴取している。胸部エックス線写真では心拡大と両側肺血管陰影の増強、両側胸水貯留を認め、心不全の診断となる。心エコー図B(長軸像Mモード)では左室拡大と心機能の低下(収縮期と拡張期で左室の幅がほぼ変化していない)を、C(二腔像)では左室から左房への逆流を認めており、僧帽弁閉鎖不全症を併発している。洞性頻脈は心機能低下の代償機転である。おそらく何らかの原因(虚血性心疾患が最も多い)で心機能が低下し左室が拡大し、それにより僧帽弁輪が拡大したことによる僧帽弁閉鎖不全症を来していると考えられる。
a 正しい。奔馬調律はIII音とIV音を聴取することで、ギャロップリズムとも呼ばれる。心不全に特徴的な心音所見である。
b 僧帽弁閉鎖不全症では心尖部に全収縮期雑音を聴取する。頸部に放散するのは大動脈弁狭窄症である。
c 座位の前傾姿勢で雑音が増強するのは大動脈弁閉鎖不全症である。
d 右房の中心から胸骨角までが5cmなので、そこから10cm足すと15cm、つまり15cmH2Oであると推定できる。正常は9cmH2O以内であるから、中心静脈圧は増加していると考えられる。両心不全に合致した所見である。
e 心拡大を来しているため心尖拍動は鎖骨中線の外側で聴取される。

正答率:87%

テーマ:僧帽弁閉鎖不全症〈MR〉に伴う心不全の症候

フォーラムへ投稿

関連トピック

なし