113A39

17歳の女子。失神を主訴に受診した。2週間前のジョギング中に気分不快となり、その場にしゃがみこんだ。その後、意識が遠くなり、1分程度意識を消失した。1週間前にもソフトボールの試合中に、2分程度意識を消失した。その翌日、心配になり自宅近くの診療所を受診し、心電図異常を指摘され紹介受診となった。意識は清明。身長147cm、体重48kg。体温36.0℃。脈拍76/分、整。血圧126/64mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸動脈に血管雑音を聴取しない。頸静脈の怒張を認めない。心音にIV音を聴取する。胸骨右縁第3肋間にIII/VIの収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。下腿に浮腫を認めない。両足背動脈を触知する。神経診察に異常を認めない。血液所見:赤血球456万、Hb 14.5g/dL、白血球8,900、血小板17万。心エコー図(A~C)を別に示す。

患者への説明として適切でないのはどれか。

「心臓の壁が厚くなっています」
「激しい運動は避けてください」
「不整脈の有無について検査が必要です」
「心臓の周りに多量の水が溜まっています」
「血縁者で同じ疾患を発症する場合があります」

解答: d

113A39の解説

運動中の失神を主訴に来院した17歳の女子。IV音と大動脈領域に収縮期駆出性雑音を聴取する。心エコー図では、A(長軸像)で中隔に非対称性の壁肥厚〈ASH〉を認め、B(短軸像)ではその厚みは明確にわかり、20mm以上である。C(長軸Mモード)では僧帽弁前尖の前方運動〈SAM〉を認め、以上の所見から閉塞性肥大型心筋症の診断となる。
a 正常の中隔の壁厚は6〜10mmであるため正しい説明である。
b 運動にて心臓の過収縮が起こり、更に左室流出路が狭くなり失神を起こしやすくなる。今までも運動時に失神していることから、今後は失神を避けるために運動制限は必要である。
c 心筋の変性により不整脈を生じやすい。心房細動や非持続性心室頻拍の検索が必要である。致死的不整脈の可能性があれば植込み型除細動器〈ICD〉を検討する。
d 誤り。心エコーにて心臓周囲にecho free spaceは認めない。
e 家族性の発症が約半数に認められ、多くは常染色体性優性遺伝の形式で遺伝する。

正答率:98%

テーマ:肥大型心筋症〈HCM〉の患者への説明

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