113A36

42歳の男性。空腹時の意識障害を主訴に来院した。30歳ころから空腹時に意識が遠くなる感覚があり、ジュースや飴などを摂取して症状が改善することを経験していた。内視鏡検査前の絶食時に意識消失発作を生じたため血液検査を受け、低血糖(46mg/dL)が判明した。母親に尿路結石破砕術歴、母方祖母に下垂体腺腫の手術歴がある。身長170cm、体重89kg。脈拍88/分、整。血圧140/92mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。左腰背部に叩打痛を認める。血液生化学所見:総蛋白8.2g/dL、アルブミン4.4g/dL、AST 42U/L、 ALT 62U/L、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 102mEq/L、Ca 13.2mg/dL、P 2.3mg/dL、空腹時血糖54mg/dL。インスリン42U/L(基準17以下)。

診断のために有用でないのはどれか。

腹部造影CT
頸部超音波検査
下垂体造影MRI
血中カテコラミン測定
血中下垂体前葉ホルモン測定

解答: d

113A36の解説

中年男性の空腹時の意識障害。空腹時の発作、低血糖(<50mg/dL)、糖類摂取による症状改善というWhipple 3徴がみられており、低血糖発作が出現する疾患群を想起する。インスリン421U/Lと高値を示していることからインスリノーマが考えやすい。本人に高カルシウム血症と左腰背部叩打痛(尿路結石疑い)、母親に尿路結石破砕術歴があることから遺伝性のある副甲状腺機能亢進症を疑う。母方祖母に下垂体腺腫の手術歴があることから、やはり遺伝性の疾患で多系統に渡る内分泌異常を呈する病態を考える。多発性内分泌腫瘍症〈MEN〉1型だ。
a 腹部造影CTで膵腫瘍(インスリノーマ)の有無を確認する。
b 頸部超音波検査で副甲状腺腺腫の有無を確認する。
c 下垂体造影MRIで下垂体腺腫の有無を確認する。
d 誤り。血中カテコラミン測定は褐色細胞腫で有用。褐色細胞腫はMEN 2型でみられる。
e 血中下垂体前葉ホルモン測定で下垂体腺腫由来のホルモン高値を確認する。

正答率:85%

テーマ:多発性内分泌腫瘍〈MEN〉1型の診断に有用な検査

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