112D68

74歳の男性。腹痛のために救急車で搬入された。本日、突然、強い腹痛が生じた。横になって休んでいたが症状が持続し、冷汗も出現してきたため救急車を要請した。意識は清明。体温36.4℃。心拍数110/分、整。血圧84/48mmHg。呼吸数18/分。SpO2 99%(マスク10L/分酸素投与下)。冷汗を認め皮膚は湿潤している。眼瞼結膜は貧血様であるが、眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は軽度膨隆しており、拍動を触れ、bruitを聴取する。血液所見:赤血球315万、Hb 10.0g/dL、Ht 30%、白血球13,800、血小板15万。血液生化学所見:総蛋白4.8g/dL、アルブミン3.3g/dL、総ビリルビン1.8mg/dL、直接ビリルビン0.2mg/dL、AST 92U/L、ALT 54U/L、LD 379U/L(基準176〜353)、ALP 129U/L(基準115〜359)、γ-GTP 17U/L(基準8〜50)、CK 138U/L(基準30〜140)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、血糖122mg/dL、Na 135mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 104mEq/L。CRP 0.7mg/dL。動脈血ガス分析(マスク10L/分酸素投与下):pH 7.45、PaCO2 34Torr、PaO2 166Torr、HCO3- 23mEq/L。腹部造影CTを別に示す。

治療として適切なのはどれか。2つ選べ。

動脈塞栓術
血栓溶解療法
人工血管置換術
経皮的ドレナージ
ステントグラフト内挿術

解答: c,e

112D68の解説

突然の強い腹痛を主訴に救急搬送された74歳男性。血圧低下と心拍数の上昇を認めショックバイタルである。腹部にbruitを聴取し、腹部造影CTでは腹部大動脈の拡大と瘤壁の膨隆、造影剤の漏出を認め腹部大動脈瘤、および切迫破裂の可能性を考える。
a 大動脈を塞栓しては生命維持が不可能である。禁忌。
b 血液をサラサラにする系の治療であり、破裂時に致命的となる。禁忌。
c 正しい。瘤化した血管を取り除き人工血管に置換する。
d ドレナージ対象が存在しない(血液をドレナージしても意味がない)。
e 正しい。ステントを留置することで脆弱化した血管を補強し、瘤の拡大を防ぐ。瘤を縮小させる作用もある。

正答率:89%

テーマ:大動脈瘤の治療

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