112D66

8歳の男児。軽自動車にはねられ受傷し、ドクターヘリで搬入された。救急隊到着時には路上で泣いていたが、その後意識障害が急速に進行し、JCS III-100まで低下したためドクターヘリを要請した。搬入時、右片麻痺と左共同偏視とを認め、気管挿管して搬送した。来院時、意識レベルはGCS 5(E1V1M3)。体温36.8℃。心拍数90/分、整。血圧134/86mmHg。呼吸数22/分。SpO2 100%(バッグバルブマスク人工呼吸下)。左瞳孔の散大と対光反射消失とを認める。左前頭部に開放創を認め、骨折部と連続している。頭部CTを別に示す。

治療として適切なのはどれか。2つ選べ。

減圧開頭術
抗菌薬投与
脳室ドレナージ
脳内血腫除去術
副腎皮質ステロイド投与

解答: a,b

112D66の解説

8歳児の交通外傷。意識レベルが悪く、挿管下での搬送となった。画像では皮下血腫、左被殻出血、くも膜下出血〈SAH〉、脳室圧排、頭蓋骨骨折と骨片の脳内陥入、気脳症など多彩な像がみられる。
a 正しい。脳室圧排により正中偏位していることからもわかるように、頭蓋内圧亢進がある。そしてこれによる脳ヘルニアで意識障害や対光反射消失がみられている。急速な減圧開頭が必要だ。
b 正しい。頭蓋骨骨折と骨片の脳内陥入、気脳症があり、感染防止に抗菌薬投与を行う。
c 脳室拡大はみられず、ドレナージの必要はない。
d 「高血圧を背景に高齢者の被殻出血がみられた」といった典型例では有用だが、交通外傷で緊急に減圧が必要な本症例では適応とならない。
e 脳浮腫に対して有用との報告はあるが、急性期に何を差し置いて行うような治療ではない。
※脳神経外科のテキストで「被殻出血と小脳出血はope適応」といった学習を行う。このイメージが強すぎるとdを選択してしまうはずだ。「救急の現場での対応」という時間間隔を念頭にアプローチする必要がある点で難問。dを選んでしまった受験生が約75%と目立った。多彩なCTを提示した意図は何か? 意識障害や対光反射について前面に記載しているのはなぜか? 細かなところに気を配りたい。

正答率:13%

テーマ:外傷性脳出血による意識障害を呈した患者への治療

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