112D25

65歳の男性。人間ドックの腹部超音波検査で異常を指摘されたため受診した。腹部は平坦、軟で、自発痛と圧痛とを認めない。血液所見:赤血球480万、Hb 15.8g/dL、Ht 46%、白血球6,800、血小板24万。血液生化学所見:アルブミン4.3g/dL、AST 32U/L、ALT 40U/L、LD 180U/L(基準176〜353)、ALP 212U/L(基準115〜359)、γ-GTP 40U/L(基準 8 〜50)、アミラーゼ73U/L(基準37〜160)、CEA 3.2ng/mL(基準5.0以下)、CA19-9 14U/mL(基準37以下)。CRP 0.2mg/dL。腹部造影CT(A)とMRCP (B)とを別に示す。

病変の質的診断を行うため次に行うべき検査はどれか。

腹腔鏡検査
腹腔動脈造影
超音波内視鏡検査
下部消化管内視鏡検査
内視鏡的逆行性胆管膵管造影〈ERCP〉

解答: c

112D25の解説

高齢男性の腹部超音波異常。腫瘍マーカー含め血液所見は軒並み正常だ。画像一発勝負となる。Aでは膵嚢胞を指摘でき、Bでは主膵管交通のあるブドウの房状(膵頭部に1つ、膵体部にもう1つ)であることがわかる。膵管内乳頭粘液性腫瘍〈IPMN〉の診断。ここまでは比較的容易なのだが、本問は設問文が難しい。「質的診断」の対義語は「存在診断」である。つまり現時点では「どこにあるか?」という存在自体が画像でわかったため、次なるフェーズとしては「どのような病変なのか?」という質的な面まで迫っていこうというわけだ。ではIPMNにおいて「どのような病変なのか?」とは具体的に何を見たいのだろうか。それは当然ながら良性か悪性か、という線引である。前年度にも111A43にて「悪性が疑われるため手術☞術式は?」という出題があった。111回は本文中に「増大」など悪性を示唆する記載があったからよいものの、112回の本症例ではそうした記載がない。どのような検査で何をみていけばよいのだろうか。
a 侵襲が大きな検査であり、現時点では行わない。
b A(造影CT)で造影効果はなく、動脈造影を追加しても意義に乏しい。
c 正しい。消化管経由で超音波を当てることで、浸潤の有無などを評価することができる。
d 下部消化管には何もみるものがない。無効。
e 約半数の受験生がeを選択して撃沈した。確かにERCPでVater乳頭の開大や粘液の確認をすることで診断にはつながりやすい。が、あえて「質的診断」と断っているからにはERCPでは力不足。
※......のようにあたかも当然のように解説を書いているが、国試の出題当時は専門家の間でもcかeかで割れた。数十年IPMNを見続けている専門家でもわからないのだ。受験生がわからなくても当たり前。当たればラッキー、外れても当然。肩の力を抜いて、次の問題へ進もう!

正答率:28%

テーマ:膵腫瘍の質的診断を行うための検査

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