112A67

56歳の男性。胸背部痛のため救急車で搬入された。本日、事務仕事中に突然の胸背部痛を訴えた後、意識消失した。意識は数秒で回復したが胸背部痛が持続するため、同僚が救急車を要請した。意識は清明。身長163cm、体重56kg。体温36.2℃。心拍数 92/分、整。血圧(上肢)右194/104mmHg、左198/110mmHg。呼吸数24/分。SpO2 100%(マスク10L/分酸素投与下)。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経学的所見に異常を認めない。血液所見:白血球21,000。血液生化学所見:AST 15U/L、ALT 15U/L、LD 261U/L(基準176〜353)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.6mg/dL、尿酸6.4mg/dL、血糖115mg/dL、Na 142mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 107mEq/L、心筋トロポニンT陰性。心電図に異常を認めない。胸部造影CTを別に示す。

治療として適切なのはどれか。2つ選べ。

血腫除去術
心嚢ドレナージ
人工血管置換術
大動脈内バルーンパンピング〈IABP〉
カルシウム拮抗薬の持続点滴静注による降圧

解答: c,e

112A67の解説

突然の胸背部痛を主訴に来院した56歳男性。胸部CTでは上行大動脈から下行大動脈にかけて解離を認めており、Standord A型大動脈解離の診断である。
a 血腫を除去したところでentryを塞がなくてはまたすぐに偽腔へ流入してきてしまう。意味がない。
b 造影剤が心嚢に貯留しており、心嚢ドレナージを選びたくなった受験生もいたと思う。ここで心嚢ドレナージの適応を思い出してほしい。「心嚢液貯留により血圧が下がった時、つまり心タンポナーデを呈している時」である。本症例は血圧がむしろ高値であり、降圧と緊急手術が優先である。もちろん手術までの間は細かくモニタリングを行い、血圧が下がった場合にはすぐドレナージを行うことは言うまでもない。
c 正しい。上記の通りStanford A型の急性大動脈解離であり、緊急手術を行う。
d 大動脈解離に対してIABPは解離腔を広げてしまうため禁忌となる。
e 正しい。両側共に血圧が高値であり、速やかな降圧作用を有するカルシウム拮抗薬(ニカルジピン)を静脈内投与し、降圧を行う。ただし、上述の通り血圧の変動には十分気を付けたい。

正答率:94%

テーマ:大動脈解離の治療

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