112A66

70歳の男性。労作時の呼吸困難を主訴に来院した。3年前から労作時の息切れを自覚し、徐々に増悪するため受診した。夜間睡眠中には自覚症状はない。43歳時に心房中隔欠損症の手術歴がある。気管支喘息の既往はない。喫煙は20本/日を47年間。3年前から禁煙している。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧134/70mmHg。呼吸数20/分。SpO2 97 %(room air)。6分間歩行試験ではSpO2の最低値は91%であった。胸部聴診では呼吸音は減弱し、軽度のrhonchiを聴取する。心エコー検査では、左室駆出率は保たれ推定肺動脈圧の上昇も認めない。呼吸機能所見:VC 3.40L、%VC 92%、FEV1 1.30L、FEV1% 38%。胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B)とを別に示す。

初期治療として適切なのはどれか。2つ選べ。

抗菌薬の投与
在宅酸素療法
副腎皮質ステロイド吸入薬の投与
長時間作用性吸入β2刺激薬の投与
長時間作用性吸入抗コリン薬の投与

解答: d,e

112A66の解説

高齢男性の労作時呼吸困難。長期喫煙歴があり、呼吸音減弱があることから慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉を考える。Aでの胸郭ビア樽状変形と、Bでの気腫性変化も矛盾しない。主訴が呼吸困難であるため、これを改善するような薬剤の投与が考慮される。
a 細菌感染による急性増悪時には考慮されるが、現在発熱もなく、不要である。
b SpO2の最低値は91%であり、これはPaO2に換算すると60Torrを超える。先天性心疾患は手術にて治癒していると考えられ、肺高血圧もない。ゆえに在宅酸素療法〈HOT〉の導入基準はみたさない。
c 気管支喘息に有効。COPDに投与することもあるが、dやeの薬剤を使用してもなお増悪を繰り返す場合に適応となる。
d・e 正しい。これらは気管支拡張薬であり、投与により呼吸困難の改善が見込める。

正答率:61%

テーマ:慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉による労作時呼吸困難の初期治療

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