112A44

54歳の男性。頭痛と視力低下とを主訴に来院した。2年前の冬にRaynaud現象が出現し、1年前に指先に潰瘍が出現したため皮膚科を受診し、全身性強皮症の診断を受けた。仕事が忙しくて半年間病院を受診していなかったが、頭痛と急な視力低下が出現したため来院した。脈拍92/分、整。血圧218/120mmHg。四肢に皮膚硬化を認める。尿所見:蛋白1+、潜血1+。血液所見:赤血球250万、Hb 7.5g/dL、Ht 24%、網赤血球3.0%、白血球8,200、血小板5万。血液生化学所見:総蛋白 6.9g/dL、総ビリルビン2.0mg/dL、AST 28U/L、ALT 35U/L、LD 610U/L(基準176〜353)、尿素窒素52mg/dL、クレアチニン4.5mg/dL。眼底検査で視神経乳頭の浮腫を認める。末梢血塗抹標本で破砕赤血球を認める。

この患者で認められる所見はどれか。

血清補体低下
血清ASO上昇
血清M蛋白上昇
血漿レニン活性低下
血清ハプトグロビン低下

解答: e

112A44の解説

全身性硬化症〈SSc〉の診断を受けていた中年男性の頭痛と視力低下。血圧が高値であり、クレアチニンも4.5mg/dLと高い。いわゆる強皮症腎クリーゼの状態だ。この状態には血栓性微小血管障害症〈TMA〉を合併しやすいことが知られる。これにより破砕赤血球が出現し、血小板が減少、溶血による貧血もみられている。視力低下は頭蓋内圧亢進による視神経乳頭浮腫が原因。
a 炎症により補体価は上昇する。
b ASOは溶連菌感染時に高値となる。
c 血清M蛋白は多発性骨髄腫〈MM〉などで高値となる。
d 腎クリーゼではレニン-アンジオテンシン系〈RAS〉が亢進する。ゆえに血漿レニン活性は上昇する。
e 正しい。溶血により、血清ハプトグロビンが低下する。

正答率:88%

テーマ:血栓性微小血管障害症〈TMA〉の所見

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