112A41

55歳の女性。呼吸困難を主訴に来院した。1年前から左頸部の腫瘤を自覚していた。2か月前に呼吸困難が出現した。次第に増悪したため自宅近くの診療所を受診したところ、胸部エックス線写真で胸水を指摘され、左鼠径部にもリンパ節腫大を指摘されたため、紹介されて受診した。身長151cm、体重70kg。体温36.8℃。脈拍 92/分、整。血圧130/102mmHg。呼吸数18/分。SpO2 94% (room air)。呼吸困難の原因は胸水貯留であると考え、入院の上、胸腔穿刺を行い胸水を排液した。呼吸困難は一時的に改善したが、穿刺1時間後に強い呼吸困難と泡沫状の喀痰がみられ、SpO2 92%(鼻カニューラ2L/分酸素投与下)となった。穿刺2時間後、症状はさらに悪化し、SpO2 85%(マスク8L/分酸素投与下)となったため気管挿管を行った。来院時と胸腔穿刺1時間後の胸部エックス線写真(A)と胸部CT(B)とを別に示す。

この患者に最も有効な呼吸管理はどれか。

分離肺換気
持続的陽圧換気〈CPPV〉
非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉
Tピースによる12L/分酸素投与
リザーバー付マスクによる10L/分酸素投与

解答: b

112A41の解説

中年女性の大量胸水(画像A左)を穿刺・排液したところ、1時間後に強い呼吸困難と泡沫状の喀痰とがみられたという。画像ではA右にて肺の再膨張をみているも、該当部分の透過性は低く、液体貯留が疑われる。同部位をBにて観察するに、しっかりとした含気をみとめておらず、再膨張性肺水腫の診断となる。1年前から左頸部の腫瘤があり、左鼠径部にもリンパ節腫大をみとめていることから、悪性リンパ腫または悪性腫瘍のリンパ節転移があり、これが胸膜浸潤したことで胸膜透過性が亢進し大量胸水がみられた症例と考えられる。
a 左右の肺を別々に換気する方法。一般に、左右肺の病態に著しい差がある際に用いられる。再膨張性肺水腫でも重症例では行うことがあるが、その場合でも患側には人工換気が必要となるため、1つしか選択できない問題である以上、正答はbに譲る。
b 正しい。肺胞が虚脱してしまっている状況であるため、陽圧をかけた人工換気が必要となる。
c 「非侵襲的」という文字通り、気管挿管下に行うものではない。
d・e bで示したように、陽圧が必要。単なる酸素投与では対処できない。

正答率:56%

テーマ:再膨張性肺水腫に有効な呼吸管理

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