111I56

1歳の男児。発熱を主訴に母親に連れられて来院した。5日前から発熱があり、活気不良となってきたため受診した。身長87.1cm、体重13.1kg。体温38.6℃。脈拍136/分、整。血圧98/54mmHg。眼瞼結膜は軽度貧血様であるが、眼球結膜に黄染を認めない。咽頭は発赤を認めない。左の側頸部に径1.5cmのリンパ節を2個触知する。胸骨左縁第2肋間にII/VIの収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、右肋骨弓下に肝を2cm、左肋骨弓下に脾を2cm触知する。下腿を中心に点状出血を認める。血液所見:赤血球366万、Hb 8.8g/dL、Ht 26%、白血球2,100(好中球10%、好酸球0%、好塩基球0%、単球4%、リンパ球51%、異型リンパ球35%)、血小板2.3万、PT-INR 1.6(基準0.9〜1.1)。APTT 41.6秒(基準対照32.2)、血清FDP 32μg/mL(基準10以下)。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.4g/dL、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 317U/L、ALT 148U/L、LD 1,217U/L(基準397〜734)、γ-GTP 155U/L(基準8〜50)、フェリチン5,430ng/mL(基準7.4〜86)。

最も考えられるのはどれか。

血球貪食症候群
再生不良性貧血
von Willebrand病
急性リンパ性白血病
免疫性血小板減少性紫斑病

解答: a

111I56の解説

1歳児の発熱。リンパ節触知や肝脾腫は1歳児であれば生理的な可能性もあり、なんとも言えない。ポイントはフェリチンの異常高値。成人Still病(または若年性特発性関節炎〈JIA〉のStill型)、血球貪食症候群、ヘモクロマトーシスの3つを想起しよう。汎血球減少がみられており異型リンパ球が出現していること、凝固異常があること、FDP高値があること、などから血球貪食症候群(とそれに合併した播種性血管内凝固〈DIC〉傾向)を考える。
a 正しい。上記の通り。
※以下、b〜eではすべてフェリチンの異常高値がみられないため、議論するまでもなく除外できるが、ここではフェリチンの記載がなかったと仮定して消去法で粘ってみよう。日頃の学習ではこのように負荷をかけたトレーニングが有効だ。そう、マラソン選手が酸素濃度の低い高地でトレーニングするかのように。
b 骨髄での造血低下が主病態であり、発熱や異型リンパ球の出現はみない。
c 出血傾向はみるも、血小板数は正常である。むろん、汎血球減少もみない。
d 急性前骨髄球性白血病〈APL〉等、一部の白血病を除き、播種性血管内凝固〈DIC〉はきたしにくい。
e 血小板低下はみるも、赤血球や白血球、凝固系は正常である(自己免疫性溶血性貧血〈AIHA〉を合併した例では貧血もみるが、少なくとも白血球減少はない)。

正答率:92%

テーマ:血球貪食症候群〈HPS〉の診断

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