111I44

65歳の男性。大腸癌の手術後で入院中である。2週間前に右腹部の腫瘤と疼痛とを自覚して受診した。来院時、身長165cm、体重64kg。脈拍64/分、整。血圧140/88mmHg。右側腹部に可動性のある径5cmの腫瘤を触知した。腹部CTで上行結腸の不整な壁肥厚と上腸間膜静脈周囲のリンパ節腫大を認め、大腸内視鏡検査と生検で上行結腸癌と診断された。入院後、リンパ節郭清を伴う右半結腸切除術が行われた。現在、手術終了から16時間が経過している。脈拍104/分、整。血圧108/80mmHg。腹部は軟だが、やや膨隆している。腸雑音は低下している。16時間尿量560mL、尿比重1.020。経鼻胃管からの16時間排液量は1,200mLで性状は淡黄色混濁である。

行うべき処置はどれか。

輸液の増量
イレウス管挿入
制吐薬の静脈投与
利尿薬の静脈投与
ソマトスタチン誘導体の皮下投与

解答: a

111I44の解説

大腸癌術後の65歳男性。受診時には140/88mmHgであった血圧が、術後は108/80mmHgと下がっており、逆に脈拍は104/分と上昇している。16時間尿量が560mL、やや濃縮気味の尿(比重1.020)であり循環血液量の低下による腎血流低下を考える。手術による侵襲で、間質部(いわゆる「サードスペース」)へ水分が逃げてしまったことが原因として考えやすい。なお、経鼻胃管からの16時間排液量1,200mLは基準範囲である。
a 正しい。まずは循環血液量の減少に対処すべきである。ただし、回復期には間質部から水分が血管内に戻ってくるので、それを想定しておくことも重要だ。
b 開腹術後16時間であり、腸蠕動が低下していても異常ではない。腸閉塞ではないため、イレウス管挿入は必要ない。
c 嘔吐の記載はなく、制吐薬を投与する必要はない。
d 尿がでない、イコール利尿薬ではない。出すものがないのに腎臓を叩いたところで余計に脱水になるし血圧も下がってしまう。尿量低下をみた場合には、まずその原因を考えるようにしよう。
e ソマトスタチンは消化管分泌の抑制作用がある。経鼻胃管からの16時間排液量1,200mLを多いと感じた受験生が選ぶように設定されたのだろうが、たとえ胃液の排泄量(基準:1日1.5〜3L)を知らなかったところで病態を見抜ければaが正解とは分かるだろう。

正答率:55%

テーマ:術後脱水への処置

フォーラムへ投稿

関連トピック