111E60

次の文を読み、60〜62の問いに答えよ。

20歳の男性。発熱と右下肢の発赤、疼痛および腫脹とを主訴に来院した。

現病歴:4日前、屋外でバスケットボールの練習中に転倒し右下腿を打撲した。次第に打撲した部位の発赤、疼痛および腫脹が出現して急速に拡がり、発熱も出現したため救急外来を受診した。

既往歴:3歳時に肺炎で入院。薬物アレルギーはない。

生活歴:大学生。バスケットボールのサークルに所属している。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。

家族歴:父親が高血圧症で内服治療中。母親は健康。

現 症:意識レベルはJCS I-2-R。身長175cm、体重63kg。体温40.6℃。脈拍120/分、整。血圧82/40mmHg。呼吸数22/分。SpO2 96%(room air)。全身に発汗を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。右鼠径部に径2cmで可動性良好なリンパ節を3個触知し、圧痛を認める。右下腿は打撲部位を中心に膝から足首に及ぶ著明な発赤、腫脹および圧痛を認め、皮膚表面には大小の血性水疱を認める。右膝関節および足関節は腫脹と疼痛のため十分な診察ができない。足背動脈は両側とも触知可能である。

検査所見:血液所見:赤血球468万、Hb 13.9g/dL、Ht 42%、白血球15,300(桿状核好中球30%、分葉核好中球55%、好酸球1%、好塩基球0%、単球7%、リンパ球7%)、血小板9万、PT-INR 1.6(基準0.9〜1.1)、Dダイマー3.4μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白6.0g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 114U/L、ALT 30U/L、LD 602U/L(基準176〜353)、CK 12,200U/L(基準30〜140)、尿素窒素30mg/dL、クレアチニン1.9mg/dL、血糖98mg/dL、Na 134mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 97mEq/L。CRP 22mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.30、PaCO2 32Torr、PaO2 70Torr、HCO3- 14mEq/L。骨盤部・下肢CTで右膝関節周囲から足部にかけての皮下組織と筋肉の強い浮腫像と、下腿の筋肉表面に沿った広範な液体成分の貯留像とを認める。

急速大量輸液を開始した。

輸液に対する反応から敗血症性ショックと判断するための指標はどれか。2つ選ベ。

尿量
心拍数
呼吸数
平均血圧
血清乳酸値

解答: d,e

111E60の解説

若年男性で右下腿の打撲を契機に、同部位が発赤・腫脹してきた。疼痛・圧痛もあり、皮膚には血性水疱がみられている。診断に重要なのはCT所見であろう。皮下組織と筋肉の強い浮腫像、筋肉表面に沿った広範な液体成分の貯留像があることから壊死性筋膜炎を考える。CKの超絶高値も矛盾しない。Dダイマーの高値、血小板の低下、PT-INR上昇からは播種性血管内凝固〈DIC〉の合併もありそうだ。かなり危険な状態といえよう。
a〜e 敗血症性ショックの診断基準が問われている。「十分な輸液負荷にもかかわらず、平均動脈圧≧65mmHgの維持に血管作動薬が必要、かつ血清乳酸値≧2mmol/L」は覚えてしまおう。dとeが正しい。

正答率:38%

テーマ:【長文1/3】敗血症性ショックの診断基準

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