110G59

40歳の男性。仕事がうまくできなくなったことを主訴に妻とともに来院した。1年前、夜間にロードバイクで走行中に転倒し、電柱で頭部を強打して救急搬送されて入院した。そのときの意識レベルはJCS III-100。左鎖骨骨折がみられ、頭部CTで両側前頭葉の挫傷と脳梁、基底核の点状出血とを認めた。翌日夕方には会話が可能な状態にまで回復したが、その後約1週間の健忘を残した。鎖骨骨折の経過は良好で運動障害を残すことなく1か月後に退院した。しかし、妻によると入院中からめまいを訴えることが多く、不機嫌で人が変わったようになっていたという。めまいは徐々に軽快し、退院5か月後に職場に復帰したが、単純ミスが目立ち、注意されると激昂する。注意散漫で指示の理解も悪く、上司の勧めもあって受診した。患者自身は「困ることはない。仕事もまじめにやっている」と述べる。疎通性は比較的保たれているが、長い質問は十分理解できない。神経学的所見と血液生化学所見とに異常を認めない。頭部CTでは両側側脳室の軽度拡大が見られた。
この患者の心理・精神機能評価に有用な検査はどれか。2つ選べ
Rorschachテスト
文章完成法テスト〈SCT〉
Minnesota多面人格検査〈MMPI〉
Wechsler成人知能検査〈WAIS-III〉
前頭葉機能検査[Frontal Assessment Battery〈FAB〉]

解答: d,e

110G59の解説

交通外傷にて頭部を強打した40歳の男性。受傷直後の意識障害、回復後の高次機能障害とを合わせ、びまん性軸索損傷〈DAI〉の診断となる。
a〜c これらは精神心理学的検査であり、気質や性格を調べるのに適する。
d 正しい。知能検査であり、高次機能障害による知能の変動を評価することが可能。
e 正しい。「不機嫌で人が変わったよう」「注意されると激昂する」といった記載からは前頭葉の障害を強く疑う。この評価に有用な検査である。

正答率:54%

テーマ:頭部外傷の後遺症に有効な心理・精神機能評価検査

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